マクロ経済学

未分類

マクロ経済学は難しい、というかややこしい。ミクロ経済学が個人や企業の経済行為の分析なのに対し、マクロ経済学では政府までプレイヤーに取り込んで、社会全体を分析するため、変数が多くなってしまうのである。

ミクロ経済学もロクな説明ができていないが(と言っては申し訳ないが)、マクロ経済学となるともっと大変だ。とにかく、マクロ経済学はケインズが登場して初めて生まれた学問であること、「大恐慌に苦しむ人々を救うには、政府が率先して『需要刺激策』を打つ必要がある」というケインズの着想を出発点としているので、需要が中心の分析モデルであるということ、ケインズ以前の「古典派経済学」は「セーの法則」に基づいており、供給を調節すれば経済問題は解決するとしか考えていなかったこと、そもそもマクロ経済学は「財市場」、「貨幣市場」、「労働市場」を分析する学問であること、あたりは一般素養として知っていていいかもしれない。

スポンサーリンク

GDPとは?

まずはGDP。しばらく前に「Y=C+I+G+(X-M)を知らない社会人はガチでヤバい」という週刊ダイヤモンドの記事がちょっと話題になったことがあった。学生時代に経済学をじっくり勉強する余裕がなかった人も大勢いるだろうから、そんな人を小ばかにしたような言い方はどうかと思うが、話題性としては十分だった。

GDPには「生産面」「分配面」「支出面」という3つの側面があり、どの側面で分析しても同じ数値になると言われる。これをGDPの三面等価の原則という。上記の式は「支出面」の分析法を表す式であり、経済評論家などがGDPに関連して話題に出すのも、ほとんどこの支出面の分析法である。とりあえず一般の人は支出面の分析法を知っておけばいいだろう。

注釈付きで書くと

Y(国民所得)=C(消費)+I(投資)+G(政府支出)+{X(輸出)-M(輸入)} となる。

なんで(X-M)がカッコつきなのかというとそこだけ外需なのである。C+I+Gの部分は内需だ。

ちなみにGDPは「付加価値」の合計である。日本中の会社の売上を合計してもGDPにはならない。大雑把に言えば利益の部分のみを合計してる概念だ。この「付加価値の合計」というのは「生産面」の見方である。

IS曲線

財市場の分析ツールがIS曲線だ。定義としては「IS曲線は、財市場の需要と供給を均衡させる国民所得Yと利子率rの組からなる右下がりの線分である」。
貯蓄Sは国民所得Yから消費Cを除いた部分と定義される。
所得Yが増えて金持ちになると、通常その増えた所得分のすべてが消費に回るのではなく、一部が貯蓄にも回るので貯蓄も増加する。この関係、つまり、国民所得Yが増大すると貯蓄Sも増大し(Y↑⇒S↑)、逆に国民所得が減少すると貯蓄も減少する(Y↓⇒S↓)関係は、矢印の方向が同じなので、貯蓄は国民所得にプラス(正)の依存関係があると言われ、S(Y)と表記される。
I(r)=S(Y) 財市場の基本式
①投資Iは利子率rにマイナスの依存関係がある。
  r↑⇒I↓ 利子率が上昇すると投資が下落する。
  r↓⇒I↑ 利子率が下落すると投資が増大する。
②貯蓄Sは国民所得Yにプラスの依存関係がある。

  Y↑⇒S↑ 国民所得が増加すると貯蓄も増加する。                                                                                                          Y↓⇒S↓ 国民所得が減少すると貯蓄も減少する。

財市場の需要が増加するとIS曲線は右(上)に、財市場の需要が減少するとIS曲線は左(下)にシフトする。

LM曲線

LM曲線のポイント

①LM曲線は貨幣市場の需要と供給を均衡させる国民所得Yと利子率rの組からなる右上がりの線分である。

②LM曲線の下側では、貨幣市場の需要が供給を上回っている。

③LM曲線の上側では、貨幣市場の供給が需要を上回っている。

貨幣市場の実質貨幣供給量が増大するとLM曲線は右(下)にシフトし、実質貨幣供給量が減少するとLM曲線は左(上)にシフトする。

IS曲線とLM曲線はそれぞれ、財政政策と金融政策に対応している。この2種類の曲線を組み合わせることで、財政政策と金融政策の発動によって国民所得を増やす様子を見ることができる。

上図では財政政策と金融政策の発動によってIS曲線はIS’曲線に、LM曲線はLM’曲線にシフトし、均衡点がEからE’へシフトしていることが見て取れる。この結果として国民所得はY0からY1まで増加している。

AD-AS曲線

さらに総需要-総供給曲線というものを見てみる。これはミクロ経済学に登場した需要供給曲線の拡大版とイメージしてもらって構わない。総需要は「消費+投資+政府需要+輸出-輸入」であるが、マクロ経済学にとって大きな変数となるのは政府需要だ。この中に、上記IS-LM曲線の財政政策、金融政策の要素が盛り込まれているのである。総供給は世の中のあらゆるモノやサービスの供給量を指しているが、その中でも最大の要素は労働量だと考えられている。

ここでミクロ経済学でも紹介した経済評論家、高橋洋一先生の解説を参照したいと思う。大人気YouTube番組、高橋洋一チャンネルの615回でイギリス、トラス政権の経済政策の失敗の解説がなされている。

まずイギリスの昨今の経済状態はEU離脱で安い労働力が入ってこなくなり、労働力のコストアップが起こっていた。さらにウクライナ有事の関係でモノのコストアップも起こっていた。そうすると総供給曲線は上に上がることになる。

こうなると国民所得はY0からY1に減り、物価(インフレ率)はP0からP1に上がるという、国民生活にとっていいとこナシのキツイ状況となる。ここで登場したのがトラス首相だった。

ここでトラス首相は減税を提案した。減税の提案というのは財政出動と同じ、需要の拡大政策を意味している。すると今度は、総需要曲線が上に上がることになる。

総需要を増やしたことで国民所得はY1からY2まで戻したものの、物価(インフレ率)はP1からP2にさらに上がってしまったのである。インフレ率が上がりすぎると国民生活はままならない。トラス首相は早々の退陣を余儀なくされてしまった。

高橋洋一先生はこういう場合、イギリスはTPPに参加するなどして供給曲線を少しでも元の位置に戻す政策努力をすべきだと説明している。鮮やかな解説だと思う。

参照↓

 

参照、引用元:

「図解 経済学入門」高橋洋一 あさ出版

「明解 経済理論入門」高橋洋一 あさ出版

「マクロ経済学入門」中谷巌 日経文庫

「新スーパー過去問ゼミ マクロ経済学」実務教育出版





コメント

タイトルとURLをコピーしました