うん。しかも古謝玄太氏は「辛勝」ではなく、かなり強い勝ち方だった。9月13日の沖縄県知事選で42万3124票を獲得し、沖縄県知事選史上初の40万票超え。大宜味村を除くほぼ全市町村でトップだった。
僕は今回、単純な「沖縄県民が保守化した」というより、沖縄政治の争点そのものが「基地」から「暮らし・経済」にかなり移った選挙と見るのが一番しっくりくると思う。
一番大きいのは「基地より経済」
共同通信の出口調査がかなり象徴的で、「投票先を決める際に最も重視したもの」は、
- 経済の活性化 49.5%
- 基地問題 20.9%
だった。そして「経済」と答えた人の78.7%が古謝氏に投票している。一方、「基地」を重視した人の72.9%は玉城氏だった。
つまり昔なら、
辺野古移設に賛成か反対か → どちらの候補に投票するか
だったところが、今回は
所得・物価・子育て・観光・経済成長をどうするか → どちらに任せるか
という選挙になった。
ここに古謝氏は非常にうまく乗った。彼は「観光・健康・環境・海洋・起業」の「新5K経済」を掲げ、県民所得500万円、子育て支援拡充など、かなり派手な経済目標を前面に出した。
そして「辺野古反対」の政治的効力が弱くなった
ここは今回かなり重要だと思う。
古謝氏は辺野古移設を明確に容認している。それでも勝ったどころか、出口調査では辺野古移設について**賛成50.2%、反対43.8%**だった。
2014年に翁長雄志氏が勝って以来、「辺野古反対」はオール沖縄側にとって非常に強力な選挙争点だった。それが12年たって、
「反対を続けても工事は進んでいる。それなら政府と交渉して基地負担を減らし、経済を良くしてほしい」
という有権者が増えた可能性が高い。実際、辺野古工事が既成事実化する中で基地問題より経済が重視された、という地元記者の分析も出ている。
だから、これは「沖縄県民が基地問題を気にしなくなった」という意味ではない。むしろ**「基地負担軽減=辺野古反対運動」という図式が崩れ始めた**と見る方がいい。
古謝本人もかなり「勝てる候補」だった
これも大きい。
古謝氏は42歳、東大卒→総務省→那覇市副市長という経歴で、2022年参院選でも27万票余りを取って現職に肉薄していた。つまり突然現れた新人ではない。
しかも今回、
自民+維新+国民民主+参政+日本保守+公明県本部
という非常に幅広い陣営になった。
これが面白くて、「自民対オール沖縄」という従来型の構図ではなくなったんだよね。
特に出口調査では古謝氏は自民・参政支持層の8割以上、公明支持層の75.4%を取ったうえ、前回玉城氏に投票した人の30.8%まで奪っている。さらに60代以下では全世代で玉城氏を上回り、10~30代では古謝氏が70%以上だった。
ここがものすごく大きい。
つまり今回の古謝勝利は、
「保守票を固めたから勝った」だけでは説明できない。
若者+中間層+前回玉城票の一部まで古謝氏へ移動した選挙だった。
だから僕なら今回の結果を、
①経済・物価・所得への関心上昇
+ ②辺野古反対という争点の相対的弱体化
+ ③玉城県政8年に対する刷新要求
+ ④古謝氏自身の若さ・行政経験
+ ⑤保守系から中道までまとめた非常に広い選挙連合
の5つで説明する。
そして、らくだくんが以前話していた「地方政治では実績より支持者の熱狂が強くなることがある」という話とは、今回はちょっと違うタイプの選挙だと思う。むしろ今回は沖縄の有権者が従来の象徴的な対立軸から離れて、かなり生活実利寄りに動いた選挙に見える。
特に「前回玉城票の30.8%を古謝が取った」「10~30代で古謝が7割超」という二つは、沖縄政治が構造的に変わり始めた可能性を感じさせる数字だと思う。
この選挙、もう一段掘ると面白いよ。**「なぜオール沖縄はここまで弱くなったのか」**を2014年の翁長勝利→2018年玉城勝利→2022年玉城再選→2026年古謝勝利と時系列で見ると、今回の大敗がかなりよく分かる。
辺野古反対はなんで弱くなったんだろう?
かなり大きな構造変化だと思う。今回の数字を見る限り、**「沖縄県民が基地問題に賛成へ一斉に転向した」というより、「辺野古反対を知事選の最優先争点にする力が落ちた」**と考えるのが近い。
一番大きいのは、反対運動を続けても辺野古工事を止められない、という感覚が広がったことだと思う。政府は工事を進め、県と国との法廷闘争でも県側が厳しい結果になった。今回、古謝玄太氏自身も「工事も進んでいる。裁判も終わっている」と述べ、「いまから別案を作るのは時間がかかりすぎる」という論法を取った。
これ、政治的にはかなり強いんだよね。
2014年ごろなら、
「知事を辺野古反対派にすれば、移設を止められるかもしれない」
という期待があった。ところが翁長雄志→玉城デニーと、12年間も反対派知事が続いたのに工事そのものは進んだ。 そうなると、辺野古反対の有権者の中にも「反対ではある。でも知事選では別の問題を優先しよう」という人が出てくる。
実際、今回の出口調査では「最も重視した問題」が**経済活性化49.5%に対して基地問題20.9%**だった。別の読売系出口調査でも基地問題は14%で、前回調査から半減したとされている。
そして二つ目が、世代交代だと思う。
今回、古謝氏は10~30代で70%以上を取ったという出口調査がある。別調査でも18~39歳では玉城氏の3倍超だった。
ここはかなり重要で、70歳の人にとっての米軍基地と、25歳の人にとっての米軍基地では、歴史的な体験の距離が全然違う。
沖縄戦→米軍統治→本土復帰→基地反対運動、という歴史を直接あるいは親世代を通じて経験した層に比べると、若い世代には、
「基地問題も大事だけど、給料が低い、物価が高い、住宅費が高い、子育てが大変、交通渋滞がひどい」
という問題の方が日々の生活では切実になりやすい。これは基地への賛否とは別の話なんだ。
さらに三つ目として、「オール沖縄」という政治連合自体が弱体化した。
かつてのオール沖縄の強みは、単なる左派連合ではなかったことだった。共産・社民などの革新勢力だけでなく、翁長雄志のような保守政治家や経済界の一部まで、
保守・革新の違いを越えて、辺野古反対だけで結集する
というところに凄みがあった。
ところが現在は県内11市の市長でオール沖縄系がゼロになっている。
つまり、「辺野古反対」という旗一本で、保守層から左派までをまとめる力がなくなってきた。結果として玉城陣営が、昔のような「沖縄県民対中央政府」という巨大な連合ではなく、だんだん立憲・共産・社民などを中心とした革新陣営に見えやすくなった面もある。今回も古謝氏は自民だけでなく、維新、国民民主、参政、日本保守など幅広い推薦を得た。
そして四つ目が興味深い。
辺野古そのものへの反対も実際に減っている。
今回の共同通信出口調査では、
賛成 50.2%
反対 43.8%
だった。
選挙期間中の別調査では賛成35%、反対37%と拮抗していたので、調査方法による差には注意が必要だけど、「圧倒的に反対」という2010年代前半の状況ではなくなったことはかなり確かだろう。
ここには国際情勢も少し関係している可能性がある。中国の軍事力増強、台湾情勢、南西諸島の防衛などが以前より現実的な問題になっている。今回の古謝勝利についても、ロイターは沖縄の安全保障環境と日本政府の南西方面での防衛力強化を重要な背景として報じている。
ただ、僕が**最重要だと思うのは「諦め」というより「争点の賞味期限」**なんだ。
辺野古反対が、
「反対だから玉城に投票する」
から、
「辺野古には反対だけど、それだけで知事を選ぶわけではない」
へ変わった。
これなら、今回の一見矛盾した現象が説明できる。基地問題そのものが消えたわけではないのに、古謝氏は前回玉城氏に投票した人の**30.8%**まで獲得している。
だから今回の選挙は、かなり歴史的だと思う。「辺野古反対なら知事選に勝てる」という2014年以来の沖縄政治の方程式が、初めて明確に崩れた選挙と位置づけられる可能性がある。
そして次に面白いのは、「じゃあ、そもそも2014年にはなぜ辺野古反対があれほど強烈な争点になったのか?」なんだ。そこを遡ると、仲井真弘多→翁長雄志の保守分裂があって、オール沖縄がなぜあれほど強かったのかもかなり綺麗につながる。
うん。かなり弱くなったと見ていい。しかも今回の知事選で突然弱くなったのではなく、2018~2026年くらいを通じて段階的に後退してきて、今回の古謝玄太氏の勝利がそれを決定的に見せたという感じだね。
特に分かりやすい数字が三つある。
- 市長:県内11市でオール沖縄系市長が0人
- 県議会:2024年県議選で玉城県政与党が24→20議席に減り、過半数割れ
- 国政:2026年衆院選では沖縄の全小選挙区を自民党が獲得し、オール沖縄系は比例復活もできなかった
2024年県議選では定数48に対して玉城県政与党が20議席、野党・中立が28議席になった。自民党は公認20人が全員当選している。
さらに市長選がもっと象徴的なんだ。
「オール沖縄」の最盛期とは全然違う
もともとオール沖縄がすごかったのは、左派が強かったからではない。
2014年に翁長雄志が作った構図は、
共産・社民などの革新勢力
+
翁長を中心とする保守系政治家
+
沖縄の経済界の一部
↓
「辺野古反対だけは一致しよう」
というものだった。
だから名前が「オール沖縄」だったわけだね。
ところが、この**「保守+革新+経済界」連合から保守と経済界がどんどん抜けていった。**
自治行政研究所の整理を見ても、かつては那覇、名護、沖縄、糸満など複数の市でオール沖縄系が市長を取っていた。それが2025年の宮古島市長選などを経て、11市すべてで非オール沖縄系になった。
2026年知事選の直前にも、ANNは**「県内11市でオール沖縄系市長はゼロ」**と報じている。
ここが非常に重要。
現在のオール沖縄は名前こそ「オール沖縄」だけど、実態としてはかなり
立憲+共産+社民+沖縄社会大衆党+一部無所属
という従来型の革新勢力に近づいている。
実際、今回の玉城氏を支えた中心も立憲・共産・社民などだった。
つまり、
2014年
「保守か革新かを超えて、沖縄が一つになって政府に辺野古反対を突きつける」
だったものが、
2026年
「辺野古反対を掲げる革新系陣営 vs 自民などを中心とする保守・中道陣営」
に近づいてしまった。
これはオール沖縄にとってかなり痛い。
そして僕は、ここが辺野古反対が弱くなったことと相互作用していると思う。
辺野古反対の求心力低下
→ 保守・経済界がオール沖縄から離れる
→ オール沖縄が左寄りに見える
→ 中間層がさらに離れる
→ 選挙で負ける
→ 「辺野古反対では勝てない」という認識が強まる
という循環が起こっている。
今回の知事選前の共同通信調査でも、最優先課題は**「経済・観光・雇用」46%に対して「普天間・米軍基地問題」26%**だった。経済重視層の7割が古謝氏、基地問題重視層の8割が玉城氏だった。
だから、らくだくんが最初に聞いた「なんで古謝玄太が勝てたんだろう?」という話は、実は今回だけ見ても分かりにくい。
翁長雄志が作った「オール沖縄」という巨大な保革連合が、この10年ほどで少しずつ解体していった。その最終局面で古謝氏が登場した――と見ると、かなり腑に落ちる。
ただし、「オール沖縄=もう消滅した」とまでは言わない方がいい。2025年参院選ではオール沖縄側の高良沙哉氏が勝っているし、基地問題が再び大きな事件などで争点化すれば巻き返す余地はある。現時点では「消滅」よりも、かつての超党派・保革横断型のオール沖縄はほぼ崩れ、革新系を中心とした勢力へ縮小したという評価が一番近いと思う。
この流れを見ると、次に気になるのは**「なぜ保守勢力や沖縄経済界がオール沖縄から離脱したのか」**だと思う。実はここを追うと、オール沖縄衰退の理由がかなりはっきりする。
なんで経済を重視する人がそんなに増えたの?
そう。ここは今回の沖縄知事選を理解するうえでかなり重要だと思う。単純に「沖縄県民が急に金儲け優先になった」という話ではなく、①生活上の経済問題が切実になったことと、②基地問題を知事選で解決できるという期待が低下したことが同時に起きた、と考えるのがよさそう。
今回の出口調査では、共同通信で「経済の活性化」が49.5%、「基地問題」が20.9%。読売の調査でも「景気・物価高対策」20%、「教育・子育て」16%、「県民所得向上」15%に対し、基地問題は14%で、前回知事選からほぼ半減している。
まず、物価高の影響が大きい
今回の選挙が行われたのは、物価高が長く続いている局面だった。朝日の出口調査分析も、物価高が続くなかで経済活性化への関心が高まったことを指摘している。
しかも沖縄の場合、経済問題には昔からの弱点がある。
観光業などサービス産業への依存度が高く、県民所得の低さが長年の課題になっている。そのため、
「基地問題も重要だけど、まず給料を上げてくれ」
という要求が強くなりやすかった。
そこへ古謝氏が真正面から「県民所得を上げる」「若者が希望を持てる沖縄経済をつくる」と訴えた。かなり大胆な目標だったため実現可能性について玉城氏から批判も受けたけれど、少なくとも選挙の議題を自分の得意な「所得・成長」に設定することには成功した。
もう一つは「基地問題の優先順位が下がった」
こっちも同じくらい重要。
基地問題そのものが解決したわけじゃない。でも、2014年から翁長・玉城県政が12年間続いても辺野古工事を止められなかった。
そうすると有権者からすれば、
「辺野古反対の知事をもう一期選ぶ」
→「それで辺野古は止まるの?」
→「止まらないのなら、今回は所得や物価を基準に選ぼう」
という判断が合理的になってくる。
つまり、基地問題の重要性そのものがゼロになったというより、「知事を選ぶことで結果を変えられる問題」としての期待値が低下したんじゃないかな。
これは相当大きいと思う。
若い世代では、さらに経済問題が身近
今回、古謝氏は18~39歳で玉城氏の3倍超の支持を得たという読売の出口調査がある。共同通信でも10~30代の古謝支持は70%を超えている。
ここには世代差もありそうだ。
たとえば25歳の沖縄県民は、2014年の翁長知事誕生時には13歳くらい。1995年の少女暴行事件も、普天間返還合意も、沖縄返還も当然リアルタイムでは経験していない。
その世代にとって日常的に切実なのは、
就職 → 給料 → 物価 → 家賃 → 結婚・子育て
という問題になりやすい。
だから若者が「基地はどうでもいい」と考えた、と解釈するとたぶん間違う。
むしろ、
基地問題について意見はある。でも、自分が知事を選ぶ最大の基準はそれじゃない。
という人が増えた、と見る方が自然だと思う。
そして玉城県政が8年続いたことも効いている
ここも見逃せない。
玉城氏は2018年から2期8年知事を務めた。そうなると選挙はどうしても、
「沖縄の暮らしは8年間で良くなったのか?」
という現職への業績評価になる。
古謝氏はそこを突いて、「現在の県政では全国との所得格差が広がっている」「若者が希望を持てる経済を」と主張した。
もちろん県民所得の問題を全部玉城県政の責任にするのは無理がある。沖縄経済には産業構造など長期的な要因があるからね。
でも選挙戦術としては強烈なんだ。
「辺野古反対を続けます」という現職に対して、
「それは8年間やったでしょう。それより次の10年で沖縄県民を豊かにしましょう」
と42歳の新人が出てきた。
これなら若者や現役世代に古謝氏が刺さったのもかなり理解できる。
だから僕は、今回の変化を**「沖縄の保守化」だけで説明するのは不十分**だと思う。
むしろ、
2014年:辺野古を止められるかもしれない
↓
2018年:翁長路線を継続したい
↓
2022年:まだ辺野古反対が最大級の争点
↓
2026年:工事は進んでいる。それより所得・物価・子育てを何とかしてほしい
という有権者の「問題の優先順位」の変化が起きたと見ると分かりやすい。
実際、選挙直前の調査でも「経済・観光・雇用」46%に対し基地問題26%だったので、投票日の偶然ではなく、選挙戦を通じてかなり明確な傾向だった。
そしてこれは古謝氏にとってものすごく都合がよかった。経済重視層の78.7%が古謝氏、基地重視層の72.9%が玉城氏だったから、「どちらの争点を重視する人が多いか」が、そのまま勝敗に直結したんだ。
僕はむしろここから先が興味深いと思う。古謝氏が実際に県民所得を上げられなかった場合、4年後もこの「経済重視=保守有利」という構図が続くのかは、まったく別問題なんだよね。


コメント