消費税2

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最初の消費税のページは書き方がかなり甘かったと思うので、さらに深掘りをしていきたいと思う。消費税はまさに議論百出の、いわくつきの税制だ。消費税は絶対必要!増税も必要!という人もいれば、消費税は悪い税であり、減税が望ましく、撤廃も検討すべし!という人もいる。見る人によって、見え方が全く異なる税制なのだ。ここではその様々な見方を、そのまま紹介できれば、と思う。

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消費税に対する見方①政府編

政府は総じて、消費税に賛成の立場と言っていいだろう。

消費税のメリット① 社会保障の財源にできる

消費税のメリットはいくつか挙げられるが、これが一番大きいと思われる。「社会保障」の章でも書いているが、周知の通り社会保障費は伸びる一方で、社会保険料収入も税収もそれに対しては不足気味である。年金はすでに年金保険料だけで賄えなくなっており、年金財源のおよそ半分は税財源となっている。

消費税の議論で「直間比率の是正」というフレーズがよく出てくるが、政府は、直接税の所得税や法人税はこれ以上上げにくいという認識を持っている。90年代以降のグローバル化した世界経済の中で、世界各国間で法人税の下げ競争が繰り広げられており、1988年に43.3%だった法人税は、2018年には23.2%まで下がっている。終戦直後の食うや食わずの貧困世帯だらけだった時代と違い、中産階級ともいえる世帯が増えた現代においては、金持ちだけに狙いを定めるような直接税偏重の税制ではなく、幅広く全世帯に負担を求める間接税のウエイトを高めた方がいい、という考え方だ(この議論には反対も多い。私自身、かなり無理があるという気もする)。幅広く全世帯に負担を求める・・・という考え方は、社会保障にも通ずる。人間だれしも年を取るのだから、子どもにもお年寄りにも負担してもらいましょうというわけだ。実際、負担が給与所得者に偏りがちな所得税に比べ、消費税であれば子供もお年寄りも、買い物の際に負担していることになる。

消費税の税率引き上げは、年金、医療、介護、子育てという「社会保障の四経費」にしか使わない、ということが消費税法に明記されている。

消費税を社会保障の目的税とすることは、本来の税制論からすると望ましくないという意見も根強い。実際、大蔵省は当初、社会保障の目的税化には反対していたようだが、99年の自民、自由、公明の連立時に、消費税の必要性を小沢一郎氏に納得させるために、大蔵官僚側が「社会保障の目的税化」という論法を用いて説得した、というのが発端のようだ。

消費税のメリット② 捕捉率が高い

所得税は、捕捉率の低い税制だと言われてきた。いわゆるクロヨンの問題である。給与所得者は9割はしっかり納めてくれる。しかし、自営業者は6割、農業、林業、水産業者は4割ぐらいしか納めてくれない、という意味である。税務署の税務調査もマンパワーの限界があるので、自営業者や農業者がどこまでしっかり所得申告しているか、納税しているか、追及するのも限界があったのだ。

またこれに派生して、トーゴーサンピンという言葉も生まれた。給与所得者が10割、自営業者が約5割、農林水産業者が約3割という表現であり、これに政治家の捕捉率が約1割というものを追加した意味合いである。

そんなバラバラの捕捉率の直接税、所得税に比べたら、消費税の捕捉率は高い。徴税サイドにとっては、都合のいい税制だということだ。

消費税のメリット③ 徴税コストが安い

これも何気に大きなポイントである。ある試算によると、所得税は税収100円当たり6.73円の徴税コストがかかっているらしいが、同じ計算では、消費税は100円当たり0.46円のコストで済むらしい。直接税というのはつまり、所得税であれば所得のある者が一人一人申告書を持ってくるのを、税務署は一人一人対応して、内容に漏れがないかチェックしなくてはならない。しかし消費税の場合、例えばコンビニで大勢の人が毎日毎日、大量の買い物をしてその都度消費税を払ったとしても、買い物客は消費税の申告をする必要がない。コンビニが、お客さんから受け取った消費税を、1年分まとめて申告してくれるのである。これなら徴税サイドから見て手っ取り早いのは明らかであろう。

消費税のメリット④ 安定財源である

これは②、③ともダブるかもしれないが、つまり捕捉率も高く、少ないコストで、比較的大きめの税収を確保できる税金だということだ。消費税は1%につき、2~2.5兆円の税収を見込めると言われている。対して、例えば相続税だと、全体で2.5兆円程度である。消費税を1%上げただけで、相続税がもう1個増えたような税収が得られるのである。政府がこれに頼りたくなる気持ちも分かるというものだろう。

直近(令和7年3月時点)では、消費税収は約24兆円で法人税収は約17兆円とのこと。消費税を0にして法人税でカバーするとしたら、法人税を2.4倍にしないといけない。そこまで高率の法人税率にしてしまえば、おそらく大企業の多くは海外に拠点を移してしまうだろう。消費税を下げて代わりに法人税で・・・という考え方に現実味を感じられない人が多くいるのも無理もないと思われる。


消費税に対する見方② 庶民編

消費税のデメリット① 逆進性がある

同じ1万円の買い物をするのでも、月収が10万円の人と月収が100万円の人では、買い物に対する負担感が違う。月収が10万円の人でも、1万円の買い物をすれば10%で1000円の消費税を払わないといけないし、月収100万円の人でも1万円の買い物であれば、1000円の消費税を払わないといけない。当然、月収100万円の人の方が、この場合の消費税の負担感ははるかに軽く感じられるだろう。逆に、月収10万円の人の負担感は比較的には重い。これが不公平だという話で、これを一般的に消費税の逆進性という。

しかし一方で、月収100万円の人は、10万円の買い物をすることもあるだろう。その場合は、その人は1万円の消費税を払ってくれる。一方で、月収10万円の人はそのクラスの買い物をすることもめったにないだろうし、だからこそ、そこまでの消費税を負担することもめったにないはずだ。

だから個人的には、「逆進性」というのは消費税に対する弱い批判に過ぎないのではないか?という気もする。実際、そういう意見も存在する。

消費税のデメリット② 消費税は「転嫁」しにくい(輸出戻し税もこの問題)

消費税は「転嫁」しにくいと言われることがある。皆さんはこの問題をご存じだろうか?実は、消費税を声高に批判する人たちの、批判のポイントの大部分はこれなのだ。確かに、税率がちょっと上がるだけでも、買い物の値段が上がって煩わしいという問題もある。ただ、それは消費税全体の中では些細な問題と言えるかもしれない。

私自身も、中小企業で仕入れ担当や納入担当などの業務を経験したことはない。だから、現場のリアルな話を実体験として知っているわけではないが、様々な文献資料に当たる限り、これが消費税の最大クラスの問題であることは何となくわかる。

つまり・・・今まで100円で大企業に卸していた商品を、消費税が10%になれば、次回からは10%の10円を上乗せして110円で卸さなければならない。中小企業が大企業に対して100円で売っていたものを、次の日からは110円で売るということだ。ところが、大企業は中小企業に対して陰に陽に圧力をかけてきて、消費税分の値上げなどさせずに、むしろ値下げを要求してくるというのだ。つまり、消費税を含めても、今まで通りの100円で中小企業→大企業の販売をしろ、ということだ。ということはどういうことか・・・?今まで100円だった商品を、値下げして91円ということにすれば、91×1.1=100.1 消費税込みで約100円、現実には100円で売れるということになるのだ。もしその値下げをしないのならば、他の中小企業から仕入れよう・・・と大企業から言われれば、当事者の中小企業はその値下げ要求を吞まざるを得ないケースも増えるだろう。そういうことを繰り返していくうちに、その中小企業は売り上げが減り、逆に消費税の納入負担は増え、申告期限になっても消費税を納められない、というケースもあるらしい。実際、今はどうか分からないが、消費税の導入から数年間は、消費税は滞納が一番多い税目だったらしい。

消費税のデメリット③ 輸出戻し税

実は、時々言われる大企業の輸出戻し税の問題も、中身を空けてみれば「転嫁」の問題なのである。輸出戻し税、正確には輸出に関する消費税の還付金の問題というべきかもしれないが、この話題には色々誤解も付きまとっている気がするので、ここで私なりにかみ砕いた解説を試みたい。

消費税において、輸出には税がかからない。これは世界各国で税制が異なるため、貿易品目に全部税をかけていたら輸出/輸入が終わった後の税務調整が煩雑になるため、国際的なルールとして最初から課税しないことになっている。すると貿易事業を多く手掛けているグローバル企業は、売上げというより仕入れの方で多くの消費税を支払うケースが多くなるのだ。企業は受取消費税から支払消費税を差し引いた分だけ納税するので、グローバル企業はこれがマイナスになることが多いということ。その分が還付されるのである。(建前上は)グローバル企業が得をしてるわけではない。

例えば・・・税抜きで1000円の商品を売り上げた際に、原料の仕入れに100円かかっていたとする。

A:普通の会社(国内企業)の場合

税込みで

1100円-110円=990円

が利益になるが、

このうち100円(受取消費税)-10円(支払消費税)=90円が消費税となる。企業はこの90円を消費税として納める。

B:輸出企業の場合

税込みで

1000円(輸出免税)-110円=890円が利益で、

0円(受取消費税)-10円(支払消費税)=-10円となり、

消費税は払いっぱなしとなっている。

それなので、支払いで出て行った10円を税務申告の後、返してもらう。

A社もB社も、税抜きの利益は900円で変わらない。

↑あくまでも表面的には上記の説明でいい、はずなのだが・・・

Bのケースで、輸出企業に納入する側の中小企業が、消費税を上乗せした110円で販売することができずに、値下げした100円(91円+消費税9円)で売るとしたらどうだろうか?

その場合の輸出企業は、

1000円(輸出免税)ー100円=900円 の利益を受け取り、さらに仕入れの100円のうちの9円は還付金として戻ってくることになる。つまり、納入元の中小企業は得をしない、むしろ値下げの分損をしている代わりに、輸出企業(大企業)は、割り増しの利益を得ることになるのである。だからこれは、「輸出」の問題というよりは、「転嫁」の問題、つまり大企業と中小零細企業の力関係の問題だと思われる。

平成25年から令和3年まで、消費税転嫁対策特別措置法という法律が施行されていたようだが、同様の法規制が現行でもあるかどうか、調べ中。

消費税に対する見方③ MMT編

これは消費税に限らない話だが、何も今の税収の水準を今後も必ずしも確保しなくとも、税率を下げて翌年以降歳入が不足しそうになったら、その不足分は全て新規国債でカバーすればいい、という考え方もあるだろう。これが究極の、消費税への反対論かもしれない。

筆者が最近、個人的に興味深いと思ったのが、「国民の貯蓄があるからこそ政府は借金ができる」という論法がどうやら間違いらしい、ということである。主流派経済学者の多くが、「国民の貯蓄があるからこそ政府は借金ができる」と考えているようだ。つまり小さな町のような国家があったとして、その国では国中の人の預金を併せても、銀行に100万円しか預けていないとする。その場合は、政府は100万円までしか国債を発行できない、という解釈なのだ。同様、国民が1億円まで預けていれば、政府は1億円まで国債を発行できる。

しかしおそらく、その論法は間違いである。政府がマネーを供給するから、国民は貯蓄ができるのだ。政府がおカネを出すのと、国民が貯蓄をするのの、順番が逆なのだ。政府が200万円のお金を供給すれば、国民は200万円貯蓄できるし、政府が2億円のお金を供給すれば、国民は2億円貯蓄できるのである。これがMMTのスペンディングファーストの考え方だ。

しかしおそらく、政府はいくらでも好きに財政支出できると考えれば、政府支出はどんどん上がっていく可能性があるだろう。

例えば、2024年度の政府予算は約112兆円であり、そのうちの税財源は約7割の78兆円ほどで、で、国債は約3割の34兆円ほどだった。税財源は5割でもいいよ、4割でもいいよ、残りの分は新規国債で手当てをするから、と考えたらどうだろう?24年の税収は78兆円だったけど、次の年の税収は56兆円でもいいかもしれない、いや、44兆円でもいいかもしれない、あとは国債に頼ればいいから・・・と考えれば??そこで、消費税を大きく下げる余地が出てくるのだ。例えば消費税を5%まで下げれば、20~25兆円程度の税収不足が発生するが、それを新規国債でカバーできると考えれば、それで問題ないことになってしまうのだ。今と同じぐらいの税収を確保し続ける必要がある、と考えれば、20兆円の税収不足は、他の税目の増税によってカバーしなければならない。皆さんはどう考えるだろうか?

零細企業の特典① 簡易課税

中小零細企業は消費税で割を食っているような書き方ばかりしてきたかもしれないが、中小零細企業にも得点は存在する。その一つが「簡易課税」だ。これは、消費税の申告書を作る際に、仕入れの分を全て集計しなくとも、売上げの一定割合を経費として認めますよ、というものだ。課税売上高が5000万円以下の事業者はこれを適用することができる。

つまり、売上高1000万円の業者があったとして、その業者が第一種事業であれば、その申告年度の経費は90%の900万円と見なしていいですよ、つまり利益は100万円だから、100万円にかかる消費税だけ申告してくださいねと、ざっくばらんに言えばそのような制度なのである。同様に、それが第二種事業であれば、800万円を経費と見なして、差し引き200万円の利益にかかる消費税を申告してもらえばいい。超~ざっくりした制度であり、街中の飲食店などはほぼこれを利用していると思われる。

↑製造業や建設業に近い業種でも、役務を提供するだけの業種であれば4種になるとのこと。迷いやすい業種であれば、税理士に相談した方が確実だと思われる。

零細企業の特典② 免税点

前々年又は前々事業年度の課税売上高が1000万円以下の事業者については、消費税が免除されている。ただし、前々事業年度の課税売上高が1000万円以下の事業者でも、インボイスを発行する必要がある場合は、課税事業者を選択できる。逆に取引の相手方から見たら、インボイスを発行する相手からの仕入れでないと、仕入れ税額控除をすることができない。だから、課税売上高が1000万円以下の事業者に対しても「課税事業者になってくれ」という依頼が増えているであろうことは想像できる。

参照文献・引用文献

「消費税の政治経済学」石 弘光

「消費税は『弱者』にやさしい!」桜井 良治

「消費増税の真実」藤井 裕久

「消費税のカラクリ」斎藤 貴男

「こんなに危ない!?消費増税」消費増税反対botちゃん 著 藤井聡 解説

「消費税という巨大権益」大村 大次郎


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