統治機構

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統治機構概論

民主主義国の統治機構にはどんな形態があるか?というと、言わずもがなだが大統領制と議院内閣制に大別される。

この2つの違いをサラッと説明できるだろうか?

大統領制は代表的な所だともちろんアメリカが採用している統治機構だ。これは三権分立を最も明確に統治に落とし込んだ仕組みともいえる。

それに対して、議院内閣制は、国会を構成する与党の一部が内閣を構成している。つまり立法機関と行政機関が連携しているということだ。極端な言い方をすると、大統領制は「権力分割」であり、議院内閣制は「権力融合」である、と説明する論者までいる。

アメリカがなんで大統領制を採用したのか、諸説あるようだが、現時点では私(管理人)は詳しくは知らない。イギリスからアメリカに逃げてきた最初期の入植者たちは、イギリス国王、イギリス政府の権力を恐れていた。だから権力をとにかく明確に分割したかったのだとする説。またアメリカ建国の父たちはローマ帝国を模範にしたがった、という話もまことしやかに語られている。それが大統領制とどれほど直接関係するのか分からないが・・・また有名な話で、ジェファーソンがフランス革命を現地で視察している、というものもある。だからモンテスキューはじめフランス思想をジェファーソンが持ち込んだのだ!と言いたいところだが、憲法制定会議は1787年に始まり、1789年にワシントンは大統領就任しているとのこと。1789年のフランス革命を視察してから…だとギリギリ過ぎる気もする。これもどれほど直接の関係があるのかよく分からない。ただフランスを現地視察しようがしまいが、建国の父たちは当然ながら教養豊かな人たちだったので、モンテスキューなどは基本テキストの一つ、くらいにしか見てなかったかもしれない。

また興味深い所では、アメリカ建国の父たちは、実はイギリスの議院内閣制をリアルに認識できていなかった、だから議院内閣制の良さがそもそも分かっていなかったのだ、とする説もあるようだ。これはアメリカ政治学者のダールが唱えたらしい。確かに議院内閣制の祖国のイギリスと言えど、議院内閣制が本格的に動き始めるのは19世紀に入ってからで、その祖型ができたのは18世紀末らしい。これはアメリカ建国期とだいたい同じで、アメリカ建国の父たちがイギリスの議院内閣制をじっくり観察する余地があったのか?分かりにくい所だ。

なぜこのエピソードを挟んだのかというと、ダールに限らず、政治学者には「議院内閣制の方が優れている」と主張する人は多いのだ。なんとなく大統領制の方が権力分立が明確で、大統領のトップダウン権限が強くてバランスの取れた体制のように思っている人も多いかもしれないが、実は政治のプロほど議院内閣制を高く評価している。

それでは議院内閣制のお得なポイントはどこか?というと、やはり先述のように、立法府と行政府が緩やかに連携しているところにある。内閣と国会で合意の取れやすい法案を早い段階で国会に提出することができ、さらに内閣はそこで成立した法律を、納得づくで行政行為にスムーズに移し替えられるということだ。要は内閣(行政)と国会(立法)にあうんの呼吸があるということだ。権力のナアナアのように見えるかもしれないが、効率という観点では優れている。議院内閣制の首相は与党の代表でもあるので、与党と内閣を束ねて力強い政治行動を取りやすくなっている。議院内閣制の祖国イギリスでももちろん内閣と与党がスムーズに連携し合っているが、その代わり国会では与党と野党が激しい論戦を繰り広げる。立法と行政が連携する代わりに、立法府内の分割で権力のバランスをとる、という見方もできるのかもしれない。ここを日本が受け継いでいるのか?はまた別テーマになるが・・・

一方で大統領制はというと、行政府は強く独立した権限を持っているように見えるかもしれないが、少なくともアメリカの大統領には法案の提出権はない。「教書」という形で、政策の指針を議会に伝えることができるだけだ。また上下両院を通過した法案をも否定する「拒否権」も持っている。また、行政府と国会は本当に独立の関係なので、国会の多数派の党派が、大統領の党派と一致するとは限らない。アメリカ大統領が共和党でも国会の主流派は民主党、ということがいつでも起こりうるということだ。ただ大統領は国民の直接選挙で選ばれる。国会で選出される議院内閣制の首相と比べて、より民意を反映した仕組み、ということは言えるかもしれない。

ただもちろん世界のリーダーたるアメリカの大統領の発言、政策案には世界中が注目している。大統領と言ってもアメリカは特別なのかもしれない。

実際、大統領制をうまく機能させている国というのはさほど多くない。日本に近しい所だと韓国、インドネシア、あとはアルゼンチン、イラン等々・・・

欧州諸国にも大統領はいるがほぼ半大統領制だ。ドイツの大統領は象徴的な意味しかなく、ほぼ儀礼的な役割しかないと言われる。フランスの大統領はそこそこの権限を持っているが、大統領以外の行政府と国会は、ほぼ議院内閣制と同じ仕組みで運営されていると言われる。

参照文献:
「総理の実力 官僚の支配」倉山満 TAC出版

「内閣制度」山口次郎 東京大学出版会




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