昭和のころから、自民党はず~っと同じように強い政党だ、と思っている人もいるかもしれないが、あまり変わらないところもあれば、大きく変わった側面もあるというのが実情だ。
では自民党の強さとは何か?あまり変わらないところといえば、とにかく政策の総合デパートとも言えそうなほど、自民党の内容が幅広いことである。前節でも見たが、元々の保守本流というのは割とリベラル色が強いといってもいいかもしれない。経済重視だ。一方で保守傍流の方は55年体制の当初のころより憲法改正の意欲が強く、タカ派に近いといえるだろう。ただ、本流/傍流関係なく憲法改正は党の政綱にも書かれていることであり、長らく財界との結びつきが強い(既得権を擁護する性格が強い)ことからしても保守政党と言って差し支えないことは確かだろう。
変わったところはといえば、とにかく1994年の小選挙区制への改正と、政治資金規正法の改正の影響である。政党以外への企業・団体献金は廃止された。その結果、派閥が作っていた政治団体は、企業・団体献金を受け取ることができなくなり、大きな打撃をこうむった。政党・政治資金団体以外の政治団体への献金の公開基準が、それまでの年間100万円超から5万円超へと引き下げられた。政治資金パーティーについても、同一の者による同一のパーティー券の購入の公開基準が100万円超から20万円超へと変更された。企業・団体は様々な理由から名前を公表されることを嫌うので、これは自民党に限らないことだが、政党の集金力は激減しているのである。特に派閥の力に頼ってきた自民党としては、派閥の力が激減してしまった。これは選挙制度とも連動している。小選挙区制においては、選挙区内で派閥合戦をするわけではないので、国会議員にとって派閥に頼る切迫性が減っているのだ。
しかし一方で政党助成制度が導入された。国会議員5名以上といった要件を満たす政党に対して、国民一人当たり250円、総額300億円前後にもなる金額を、議員数と得票数に応じて配分する制度である。各政党は政党交付金への依存を深め、その配分権を有する党執行部の権力が増大した。
つまり政治資金の流れは変わったのだが、自民党は自民党なりにそれら改革にうまく適応してきたのだ。これは国会~内閣の章でも書いていることだが、自民党は内閣なり官邸の力を強める術を、80年代後半から開発し続けている。首相は諮問機関をうまく活用するようになっている。派閥の力は弱まったものの、政治資金改革も相まって、かえって党指導部、内閣の力は強まっているのだ(政党交付金の配分権や、選挙の際の公認権は党指導部にある)。
それに、自民党は支援団体がとにかく幅広い。ただここも変化していることは確かだ。
55年体制の間はとにかく農業と土建だった。農家の所得を補償する仕組みを農林族が提供する代わりに自民党は農業票を獲得し続け、公共事業を各地に発注し続ける代わりに土建票も得てきたのである。このあたりの業界は依然として自民党を支持し続けており、その意味で大きく変わっていないともいえるが、安倍政権下では農協改革が進み、小泉政権下では公共事業の削減も進められた。集票力はかなり減っているだろう。それに最強の集票機関の一つが全国郵便局長会だったのだが、言わずと知れた話だが、小泉政権の郵政民営化はここを狙たものだった。平成以降、自民党のトップは自らの既得権を突き崩すこともいとわず、改革に励んでいるというのはある意味事実なのである。
ただこれら以外にも、遺族会や医師会、それに宗教関係団体と、自民党は幅広い業界を友好団体として押さえている。
それに自民党は地方組織が強いともいわれる。2012年に政権を奪還した際、地方組織の強さをべた褒めした自民党幹部は多かったらしい。都道府県議会にしても市町村議会にしても、自民党の強さは圧倒的なのだ。また、平成以前の時代からの名残で、各地の議員の後援会が長らく存続しているといいうのも強みになっているだろう。こればかりは政治改革で倒れなかった部分なのかもしれない。
あとは、ある意味最強の政権維持術ともいえるのが、公明党との連立だ。公明党は600~700万票もの票を持っているともいわれる。公明党は小選挙区で自民党候補を支援する見返りとして、比例代表の票を獲得している。
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