25.1.18
最近、日本復活論を唱えるビジネス書、国際情勢分析本を2冊読みました。1冊はエミン・ユルマズ氏の「エブリシング・バブル 終わりと始まり」、もう1冊は斎藤ジン氏の「世界秩序が変わるとき」(文春新書)です。
特にエミン・ユルマズ氏の本は1年近く前から話題書となっており、「何を今さら」と受け取られる向きもあるでしょう。私は取り寄せてからずっと積ん読状態になっておりました(汗)エミン・ユルマズ氏の本は以前も読んだことあるから、まだ後からでいいや、とズルズルと・・・しかし、不思議なタイミングで似たようなテーマの本を併せて読むことができたので、「日本復活論にも信憑性あるか!?」とインパクトを持って考えることができました。
両者に共通しているのは、中国の停滞観測です。リーマンショック後の「世界の景気盛り上げ役」の時代は一巡した感じがあり、中国は人件費も高くなりつつあり、投資のうまみが減りつつある等と言われています。不動産バブル崩壊はまだまだ収束が見通せず、金回りは悪くなっていると言います。大卒者の就職率もかなり落ちていると言われます。何よりもアメリカとの経済対立が激化しすぎて、アメリカの経済人たちも、中国への投資を引き揚げつつあると言います。中国への投資の話題をあえて避けるほどだとか。中国から逃げていくお金がどこに向かうのかというと、一番いいポジションにいるのが日本だというのです。
エミン氏が言うには、日本企業の姿勢が変化し、株主重視の姿勢が顕著に表れていると言います。PBR1倍割れの解消が進んでおり、配当による還元も増えているとのことです。持ち合いの解消も進んでいます。また、日本には割安なバリュー株がたくさんあるとのことです。世界の投資家が、日本に触手を伸ばし始める条件が整いつつあるようなのです。
それに30年前と比べると日本は、外国人にとってもはるかに暮らしやすい国になっているとのことです。外国語の看板や案内パンフ的なものも増えましたし、イザとなったらスマホのグーグルレンズで日本語の翻訳もできますし、ユーチューブで日本解説動画もたくさん出ています。それに周知の通り、日本は世界屈指の、観光資源大国です。日本に来たい外国人はまだまだ山ほどいるはずだ、というのです。
齋藤氏の分析によると、失われた30年が通り過ぎたのと同時に、多くの会社で、時代の進化についていけないゾンビ社員が大量に退職し始めており、人員の新陳代謝がようやく進みつつあるとのことです。また、2023年の春闘によるベアの復活で、賃金上昇の明確な傾向が見られるようになった、とのことです。長らく、コストプッシュの質の悪いインフレだ、等と言われ続けてきましたが、ようやく日本人全員の所得が上がり、景気がいいという本来の意味のインフレ環境が、取り戻されつつあるようなのです。
また、リーマンショックとその後の米中デカップリング、ウクライナ戦争などの世界情勢の移り変わりにより、新自由主義の潮流は明らかに終わりつつあり、地政学に上手く対処することが一番だ!という時代に切り替わりつつある(すでに切り替わっている?)とのことです。これは、新自由主義への順応が苦手だった日本社会にとっては、むしろ有利な世界の潮流と解釈できるとのことです。米中対立の激化により、アメリカはあたかも対ソ冷戦の時代と同じように「強い日本」を必要としている、それもヨーロッパに頼れた対ソ冷戦と違って、対中新冷戦は、東アジアが主体である。だからこそなおさら日本が主役を張れる地政学的条件が整っているというのです。
※齋藤ジン氏の本は、最近書きました別のカテゴリー、「日米関係(経済編)」の方でも引用させていただいています。ぜひともおヒマのある方は、日米関係の方も見ていただければと思います。
※本来は国際情勢のカテゴリーの中にまとめてあります。
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