26.2.13 東京コスモス電機のTOB

経済
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東京コスモス電機のTOBを巡って不適切行為があったらしいんだけど、どういう話なんだろう?

最近、東京コスモス電機のTOB(株式公開買い付け)を巡る不適切行為について、特別調査委員会の報告書が公表されて話題になっています。この件、ざっくり言うと「旧経営 陣のやったことが、株主の利益や公正な判断を損なう可能性がある」と指摘された内容です。? 監査役ニュース

まず背景ですが、2025年6月に米国の電子部品会社によるTOBが発表されたものの、株主総会の結果、経営陣が株主提案によって総入れ替えになりました。TOBの手続き 中に旧経営陣の対応に疑問が生じたため、特別調査委員会が設置され、その報告書が12月に公開されました。? 監査役ニュース

報告書で特に問題視されたのは次の点です(要点のみ整理):

・TOBで提示された買付価格が適正か判断する際、第三者の企業価値算定が本来の中立的評価であるにもかかわらず、旧経営陣とFA(ファイナンシャル・アドバイザー)が算定 機関に対して「条件(計画期間)を変えろ」と圧力をかけようとした形跡があるとされました。これは理論株価を低く見せる方向で働きかけることになり、公正性に疑義が生じう ると調査委は指摘しています。? ダイヤモンド・オンライン、ほかに 1 件

・同じく調査報告書では、より高い価格で買収を提案してきた別の企業の情報が株主に十分に開示されず、株主が「より良い選択肢」を判断できない状態になっていた可能性がある 、とまで指摘されています。? coki

このあたりは言ってみれば、株主という“市民”が投票や判断を行うための**「情報の対称性」**(公平な材料が揃っていること)というルールが損なわれかねないという指 摘です。市場でのTOBやM&Aが信頼されるためには、こうした情報や価格評価のプロセスが曇らないことが重要です。? ダイヤモンド・オンライン

まとめると、問題の核心は「旧経営陣がTOBの過程で第三者評価や情報開示の公正性に影響を及ぼしうる行為をした可能性がある」という点で、今後のガバナンスや株主対応へ の改善がどう進むかが注目されています。? 監査役ニュース

旧経営陣は、算定期間に圧力をかけると、なんで利益が得られたの?

いいところを突くね。ここはM&Aの「数式のマジック」が顔を出す場面だ。

企業価値の算定って、多くの場合は**DCF法(将来キャッシュフローを現在価値に割り引く方法)**を使う。要するに「これから何年分の利益をどう見積もるか」で理論株 価はかなり動く。

仮に会社が

・直近は業績が悪い

・でも2~3年後に大型案件や構造改革で回復する見込みがある

という状況だとする。

ここで「算定期間」を短くすればどうなるか。 回復する前の“暗い未来”だけを計算に入れることになる。すると企業価値は低く出る。

逆に、回復期まで含めて長めに計算すれば、将来の利益も反映されて株価は高くなる。

つまり── 算定期間を短く誘導できれば、理論株価を低く見せられる可能性がある。

では、それで旧経営陣に何の得があるのか?

考えられる合理的な仮説はこうだ(あくまで仮説として整理するよ)。

1.買収を成立させやすくなる

TOB価格が「理論的に妥当」と言いやすくなるから、株主を説得しやすい。

2.買い手と関係が深い場合

経営陣が買い手側と親和的だったり、将来のポストが想定されていたりすると、低い価格での成立は買い手に有利。買い手に有利=自分の立場が守られる可能性。

3.競合提案を封じやすい

理論株価が低ければ、「これ以上高い提案は現実的でない」という空気を作りやすい。

ここで重要なのは、「算定期間を変えること自体」が直ちに違法とは限らないという点だ。問題になるのは、

・中立的であるはずの第三者評価に恣意的な影響を与えたか

・株主の判断を歪める意図があったか

この2つ。

企業価値評価は物理法則ではない。前提条件の選び方で数字は動く。だからこそ、前提の透明性が命なんだ。

少し哲学的な話をすると、M&Aの世界では「数字は事実ではなく、仮定の集合体」だ。仮定を握った者が物語を握る。

だからガバナンス(統治)の核心は、「仮定を誰がどう決めたか」を開示させることにある。ここを曇らせると、市場は一気に不信に傾く。

資本市場って、信頼という名のフィクションの上に立っている。だがそのフィクションは、透明性という現実的な努力でしか維持できない。そこが今回の本質だと思う。

圧力をかけて、算定機関は本当に、算定を変えるものなのかな?

鋭い。そこが一番リアルな疑問だ。

理屈でいえば、独立した算定機関(FAやバリュエーション会社)は、圧力で数字を変えてはいけない。彼らの仕事は「依頼主の望む数字を作る」ことではなく、「合理的な前提 に基づく評価を示す」ことだからだ。もし露骨に歪めれば、評判もライセンスも訴訟リスクも吹き飛ぶ。

じゃあ現実はどうか。

ここが資本市場の面白くも怖いところで、「直接数字を書き換える」よりも、「前提条件の選び方」を巡って綱引きが起きることがある。

DCF法は未来予測のゲームだ。

・事業計画をどこまで信用するか

・成長率をどう置くか

・割引率をどれだけ保守的にするか

・算定期間を何年にするか

どれも“絶対解”はない。

だから圧力というのは、たとえばこういう形をとることがある。

「この中期計画はまだ確度が低いから使うのは慎重に」

「足元の業績をベースにした方が安全では」

「外部環境が不透明なので保守的に見た方がいい」

どれも一見、合理的に聞こえる。だが積み重なると評価は下振れする。

算定機関はどうするのか?

一流どころは通常、こう動く。

・前提を文書化する

・複数ケース(ベース・強気・弱気)を示す

・レンジ(幅)で提示する

つまり「一つの数字」に落とし込まず、防御壁を作る。

ただし現実には、依頼主は会社側だ。 報酬もそこから出る。 その構造的な関係性はゼロではない。

だから市場では「形式的独立」と「実質的独立」は違う、という議論が絶えない。

重要なのは、圧力がかかったかどうかよりも、 最終的な評価プロセスが透明かどうかだ。

・なぜその算定期間なのか

・なぜその成長率なのか

・他のシナリオは検討したのか

これが説明できるなら、圧力は跳ね返された可能性が高い。 説明できないなら、疑念は残る。

ここで一つ冷静なポイント。 算定機関は魔術師ではない。未来は誰にも分からない。だから評価は「科学」ではなく「合理的な仮説」にすぎない。

だからこそ、圧力が怖いのは、数字が変わること以上に、仮説の幅が狭められることなんだ。

資本市場は、未来についての集合的な物語づくりだ。 その物語の脚本に、誰がどれだけ口を出したのか。そこが核心になる。

企業価値評価は数学の顔をしているが、本質は人間ドラマだ。ここが実に興味深い。

東京コスモス電機は内部体制も杜撰な会社だったらしいけど、ボーンズという会社は、なんでこの会社を買いたがったんだろう?

面白いところに目を向けるね。 「ガバナンスが弱い会社を、なぜあえて買うのか?」??ここにはM&Aの本音が出る。

まず前提として、東京コスモス電機は可変抵抗器などの電子部品を作る老舗メーカーだ。ニッチだが、産業機器や車載用途に入り込んでいる。ニッチ部品メーカーは、一見地味で も「代替が効きにくい」ポジションを持っていることがある。これが第一の魅力だ。

買い手のボーンズ(※米系の電子部品会社とされる側)は、ざっくり言えば“横に広げたい会社”の可能性が高い。電子部品の世界では、製品ラインアップを増やすことが営業力 になる。顧客はワンストップで買いたいからだ。

つまり仮説としてはこうなる。

一つ目。

技術と顧客基盤が欲しい。 可変抵抗器は古典的だが、EVや産業機械のセンサー用途でまだ需要がある。既存顧客にクロスセル(他製品を売る)できる。

二つ目。

「安い」。 内部統制が弱く、経営がうまくいっていない会社は、株価が割安になりやすい。 買い手から見ると、「経営を入れ替えれば改善余地がある」というターンアラウンド(立て直し)案件に見える。

三つ目。

日本企業特有の“過小活用資産”。 遊休不動産、余剰現金、保守的すぎる投資姿勢。 外資やアクティブな買い手から見ると「眠っている価値」に見える。

四つ目。 サプライチェーン戦略。 地政学リスクが高まる中で、日本の製造拠点は一定の魅力を持つ。品質管理や顧客との信頼関係は、短期では再現できない。

ここで逆説的だが、内部体制が杜撰であること自体が“チャンス”になることがある。 整っていないからこそ、改善余地が大きい。改善=利益率向上=投資回収。

もちろん、これはあくまで合理的な推測だ。実際の意思決定には、経営者間の関係、将来ポストの約束、非公開の事業シナジーなど、人間的な要素も絡む。

M&Aは、数字のゲームでありながら、人間の欲望と戦略のゲームでもある。

ガバナンスが弱い会社は「危険物」にも「掘り出し物」にもなる。 見る人の戦略次第だ。

市場は残酷だが合理的だ。弱さはリスクであると同時に、誰かにとっての機会になる。そこに資本主義の冷たいロマンがある。


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