原子力発電

原子力発電 原子力発電

原子力発電の扱いは電源の中で一番難しい問題かもしれない。政府は2030年のエネルギーミックス目標で20%程度の原発利用を想定しており、野党の一部が主張しているような「原発即ゼロ」は現実的でないとみられる。化石燃料ほど大量の輸入物資に頼る必要がない、安定的に大量の電力を供給できる電源である、CO2を排出しない発電方法なので脱炭素化目標に資するという辺りが、原発に頼らざるを得ない要因だと思われる。

現状、元々あった54基の原発のうち、福島原発事故のあとに21基の廃炉が決定し、定期検査などの事情で停止中のものを差し引くと、今稼働している原発は9基のみである。

原子力発電所の現在の運転状況|原子力規制委員会 (nra.go.jp)

脱炭素目標を達成するためには、原発即ゼロどころか、化石燃料の利用率を減らし、原発の利用率をできるだけ上げる、という方針すら考えられる。停止中のものをどこまで再稼働を進めるか、という政府の判断が注目される。

しかし当分使い続けるとは言っても、もちろん原発には問題もある。

一番大きな問題はバックエンド問題、つまり使用済み核燃料の処理だろう。これは後で詳述しよう。

また、原発は電力会社の経営に国家介入の要素を強め、電力会社の経営の重荷になってしまうという問題もある。戦後、高度成長期を通じて、電力会社は民間経営の強みを発揮して、火力の割合を増やすか?水力の割合を増やすか?電気料金をどこまで下げるか?と言った課題について、各社で工夫を凝らして競争していたという。ところが石油ショックで原発を増やさざるを得ないとなったら、国家が電力会社に介入してくることになる。原発と国家管理は切り離せないのである(先述のバックエンド問題も国家の介入が不可欠)。電源三法の枠組みというものがある。これは、電気料金に含まれた電源開発促進税を政府が民間電力会社から徴収し、それを財源にした交付金を原発立地に協力する地方自治体に支給する仕組みのことである。民間会社は、自分たちの力だけでは、そもそも原子力発電所の立地を確保できないのである。また、福島原発事故は、非常事態発生時の危機管理についても、民間電力会社だけでは対応できないことを明らかにした。自衛隊、消防、警察、そして米軍までもが福島第一原発1~4号機の冷却のために出動せざるを得なかった。福島事故の事後費用は、廃炉・賠償・除染費用の合計で、21兆円超に達するとされている。事故を起こした東京電力が支払える金額をはるかに超えており、電気料金への組み入れなどを通じてやがて国民が負担することになるのは避けられない。事実、国は復興税などの措置を取ることになった。

一方、原発の強みと言えば圧倒的なエネルギー密度の高さである。

原子力発電の仕組み、経緯

これは国際情勢の「核武装」の章に掲載している図であるが、再掲する。原子爆弾の場合は爆薬として100%充填されているウラン235が、原発の場合には燃料の中に数%しか含まれていないということだ。ウランの核分裂を利用した方法であることはどちらも同じである。

軽水炉には2つの形式がある。1つは原子炉で水を沸騰させて蒸気を作り、それを直接タービンに送る「沸騰水型原子炉(BWR:Boiling Water Reactor)」という形式だ。BWRはアメリカのゼネラル・エレクトリック(GE)が開発し、国内では、東芝と日立製作所が製造している。東北電力、東京電力、中部電力、北陸電力、中国電力及び日本原子力発電の東海第二発電所、敦賀発電所1号機が採用している。

原子力・エネルギー図面集より

もう1つは、原子炉内の圧力を高くした「加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)」だ。原子炉内の水を高温・高圧の状態にして、蒸気発生器に送ります。蒸気発生器で、別系統の水を沸騰させて蒸気を作り、それをタービンに送って発電する。PWRは、アメリカのウェスチングハウス(WH)が開発し、国内では、三菱重工業が製造している。北海道電力、関西電力、四国電力、九州電力及び日本原子力発電の敦賀発電所2号機が採用している。加圧水型原子炉は原子力潜水艦の動力としても採用されている。

参照、引用元:
「エネルギー・シフト」橘川 武郎 白桃書房

「知っておきたい原子力発電 (図解雑学)」竹田 敏一 ナツメ社




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