水素・アンモニア

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水素

脱炭素時代において、日本が注力している分野の一つが水素である。
水素の意義は次の5点にまとめることができる。
第1は、水素が使用時に二酸化炭素を排出しない、地球にやさしいエネルギー源だということである。ただし、これはあくまで使用時に限ってのことであって、製造時に化石燃料を使用すれば、水素のこのメリットは損なわれる。したがって、水素の環境特性がフルに発揮されるのは、再生可能エネルギーを使って水素を製造した場合だということになる。
第2は、水素を燃料電池として使う場合、電気化学反応で電気を発生させるためエネルギー効率が極めて高く、省エネの切り札となる点である。一般電気事業者による通常の発電の場合には、おおまかにいって、約6割のエネルギーが無題になる。燃料電池による発電は、このエネルギーロスを大幅に解消する。また、家庭用・ビル用の定置型燃料電池は、熱と電気をあわせて供給するため、この面でも、省エネ効果が大きい。
第3は、燃料電池自動車や定置型燃料電池が、直下型地震などの有事の際に緊急のエネルギー供給源となり、命とくらしを守る武器となる点である。燃料電池の普及は、防災機能を向上させることにつながる。
第4は、水素は色々な方法で作ることができ、エネルギー源としてだけでなくエネルギーの運搬手段としても使うことができるため、他のエネルギー源と組み合わせれば、他のエネルギー源の弱点を補い、それらのメリットを引き出す役割を果たしうる点である。ある意味では、この「エネルギー構造全体を変えるポテンシャル」こそ、水素活用の最大の魅力だと言える。
第5は、水素利用技術に関してわが国は世界をリードしており、水素活用が進めば、日本経済全体の活性化と雇用の拡大に貢献できる点である。燃料電池関連技術の国別特許出願数の点で世界トップを占めるのはわが国であり、第2位以下を大きく引き離している。水素タンクの製造に関しても、日本メーカーの競争力は高い。水素利用分野は、地熱発電分野などとともに、わが国が競争優位を確保しているのである。
ただし、水素活用にはいくつかの課題が残されていることも事実である。
最大の課題は、コストを切り下げることである。水素は生成方法別に、化石燃料からCO2排出を伴いながら抽出するブラウン水素、その過程でCO2を回収して生成するブルー水素、再エネ起源の電力を使って生成するグリーン水素などがあるが、いずれも非常にコストが高い。コスト低減の王道は技術革新であるが、それ以外にも、①コストが低い他のエネルギー源と組み合わせて水素を使い、水素のメリットを生かすようにして、全体としてのコストパフォーマンスを高める、②当面は相対的に低コストの副生水素(その生産過程では化石燃料を使用することが多い)を用いて水素供給インフラを整え、水素利用の量産効果を引き出してコストを低減させてから、再生可能エネルギー由来の「グリーン水素」の使用量を増大させる、等の工夫も必要であろう。
また、水素が可燃性の気体であり、取り扱いが難しいということもある。
もう1つの課題は、住民が参加して地域ごとに水素社会を作る仕組みを構築することである。そのためには、安全確保面や税金負担面などで住民の合意が形成されるようなプロセスが求められる。世界的に見ても、分散型エネルギー供給に資する水素の活用は、地域ごとに進められることが多い。地域に立脚した水素社会づくりには、住民参加が不可欠の要素なのである。

アンモニア

世界全体でのアンモニアの用途は、現状、約8割が肥料、残り2割が工業用だが、次の2つの役割を今後の脱炭素社会で担うと考えられている。
1つが、水素の輸送技術としての役割である。水素は世界へ流通させるためには、その輸送技術に課題があるとされている。一方、アンモニアは窒素と水素から構成される非常に安定した物質で、すでに安全な輸送技術が確立されている。そこで大量輸送が難しい水素を、輸送技術の確立しているアンモニアに変換して輸送し、利用する場所で水素に戻すという手法が研究されており、日本企業もアンモニア輸送に取り組んでいる。
もう1つは、エネルギー源としての役割である。アンモニアは、それ自体でも燃焼によりエネルギーを取り出すことができ、かつその過程でCO2排出を伴わない。現時点で、アンモニアだけをエネルギー源とした発電は難しいとされているが、石炭火力発電に混ぜて燃やす混焼技術は開発が進んでいて、混焼した分だけCO2排出が抑制される。日本は現状、火力発電の比率が高く、この分野からのCO2排出を削減する必要があるため、こうした特性に着目したアンモニアの使用がグリーン成長戦略に資すると期待される。

参照、引用元:
「エネルギー・シフト」橘川 武郎 白桃書房

「カーボンニュートラル 超入門」前田 雄大 技術評論社




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