日本銀行

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日本銀行には「銀行の銀行」、「政府の銀行」、「発券銀行」の3つの役割がある。

銀行の銀行

私たちが近所の銀行にお金を預けるのと同じように、金融機関は日本銀行にお金を預けている。日本銀行にお金を預けている金融機関は、銀行(外国銀行の支店を含む)や信用金庫、全国銀行協会などのほか、証券会社や証券取引所、さらには、短期資金の貸し借りを仲介している短資会社などもある。
こうした金融機関が日本銀行に持っている口座は、当座預金である。当座預金とは、預けていても利息は付かないけれど、いつでも引き出すことができる預金のこと。ではなぜ金融機関は日銀に当座預金を持つのか。これには3つの理由がある。

金融機関などの取引の決済手段

たとえばあなたがA銀行のB支店から、C信用金庫のD支店にお金を振り込む場合。ATMで簡単にお金を送ることができるが、このときにA銀行からC信用金庫に直接お金を運ぶわけではない。A銀行が日本銀行に持っている当座預金の口座から、C信用金庫が日銀に持っている当座預金の口座にお金が動く。金融機関同士の資金決済のために日銀の当座預金が使われている。

安心できるところにお金を預けておき、必要になったときにすぐお金を引き出すため

これなどは私たち一般市民が近所の銀行にお金を預けるのと同じ理由だ。企業や個人は、金融機関に預金している。その預金者が多額の資金を引き出すことになれば、金融機関は、日銀の口座に置いてある預金から現金を引き出すこともある。

「準備預金制度」としての預金

金融機関は、預金者から受け入れている預金などのうち一定の比率(準備率)を、必ず日銀に預けておかなくてはならない。1957(昭和32)年に施行された「準備預金制度に関する法律」によって決められている。

最後の貸し手

日本銀行は、「銀行の銀行」と呼ばれると同時に、「最後の貸し手」とも言われる。それは、もしどこかの金融機関で預金者による取り付け騒ぎが起きたり、金融機関が破綻して大きな混乱を引き起こす恐れが出たりしたとき、その金融機関に資金を貸し出し、混乱を防ぐ役割があるからだ。こうした日銀の「最後の貸し手」としての融資のことを「日銀特融」(日銀特別融資)という。資金を借りようとしている金融機関は経営危機に瀕しているわけだから、日銀の融資を受けるための担保がない。この場合、日銀は担保なしで貸し出す。だからこそ「特別融資」と呼ばれる。

政府の銀行

私たちが国に納める税金や社会保険料は、銀行や郵便局を経由して日本銀行に集まる。日銀が政府にとっての〈金庫〉になっている。
なぜ一般の銀行で納付できるのかと言えば、一般の銀行や信用金庫などが、日本銀行の代理店をつとめているからだ。
日本銀行が管理している政府のお金は「国庫金」と呼ばれる。このうち、国税や社会保険料として受け入れる国庫金を「歳入金」と呼び、年金の支払いなどで出ていく国庫金は「歳出金」という。
毎月上旬には、前月に納付された税金や保険料が日銀に納められて国庫金は増加。下旬には公共事業の支払いなどで国庫金は減少するというパターンを取るのが通常だ。
日銀は「国の銀行」である以上、借金(国債)の事務も担当している。
この国債の発行や応募の受け付け、払込金の受け付け、利払いなどの業務も、日本銀行が担当している。
国債を購入しようと考える金融機関は、「これだけの金額分を、いくらで購入します」という入札を行う。各金融機関が入札することで、「需要と供給」の関係から発行金利が決まってくる。こうして発行条件が決まるので「国債の発行市場」という。この手続きは、「日銀ネット」で、コンピューター上の手続きとして進められる。
国債を買った人や会社には、利子が支払われる。これを担当するのも、日本銀行の仕事である。
発行された国債は、自由に売買される。これを「国債の流通市場」という。売買される国債の価格は、これも「需要と供給」の関係で決定される。
発行済みの国債を購入したい金融機関が多ければ、国債の売買価格は上昇する。その国債を購入して受け取れる利子は決まっているのだから、価格が上昇すれば、利率は低下する。

発券銀行

私たちが使っているお札には、「日本銀行券」と印刷してある。日本銀行が発行している「券」なのだ。といっても製造しているのは日本銀行ではなく、国立印刷局。お札の表の下の方に小さく「国立印刷局製造」と書いてある。
日本銀行は、国立印刷局に製造代金を払ってお札を買い取る。製造代金は1枚当たり約15円。
ちなみに硬貨を発行しているのは政府である。
では日銀は、お札をどうやって発行しているのか。
日銀は「銀行にとっての銀行」でもあり、全国の金融機関が日銀に当座預金口座を持っている。金融機関がこの口座からお金を引き出すとき、日銀から日銀券を受け取る。このとき日本銀行券が発行されたことになる。
ということは、日本銀行券が日銀の中にある段階では、〈ただの紙〉ということでもある。日銀の外に出たとたんに、日銀券はお金として通用する。法律でお金として通用することが定められてもいる。これを「強制通用力」という。
こうして全国の金融機関に対して発行された日銀券を、企業や個人が金融機関から引き出すことで、世の中に出回る。

紙幣はいくらでも発行できる?

世の中に出回る商品の量は変わらないのに、紙幣(政府紙幣)だけが増えてしまえば、起きるのはインフレだ。近代国家ではこの事態を避けるために、政府からは独立した中央銀行を設立し、価値あるものと引き換えに紙幣を発行する仕組みを整備した。
しかし中央銀行に発券させる仕組みにもリスクはある。第二次世界大戦中、日本政府は、戦争の費用を賄うために国債を大量に発行し、発行した国債をそのまま直接日本銀行に買い取らせた。これなら政府は、あたかも政府紙幣を発行するのと同じように、必要なお金をいくらでも調達できる。結果としてお金の価値は暴落。猛烈なインフレが日本を襲った。
戦後は、この戦前・戦中の苦い経験から、政府が発行した国債を日本銀行が直接買い入れる「日銀引き受け」は禁止された。政府が発行し、市場に出回った国債のみ、日銀は購入できることになったのだ。

参照、引用元:
「日銀を知れば経済がわかる」池上彰 平凡社新書

おススメ文献:
「中央銀行」白川方明 東洋経済新報社





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