金融政策のしくみ

以前は公定歩合が日本全体の金利水準を決めていた。公定歩合とは、金融機関が保有している国債や債券、手形を担保に日銀が資金を貸し出す際の金利のことだった。

公定歩合の上げ下げで景気の良し悪しに対応していた(公定歩合を上げれば金融引き締めで、景気過熱への対策、公定歩合を下げれば金融緩和で、不景気への対策)。

ところが1994年、規制緩和の一環として、「金利の自由化」が実施された。それまで金融機関への預金の金利などは、当時の大蔵省が厳しく管理し、どこも横一線で同じ金利にそろえていた。これでは金融機関同士の健全な競争が起きないという判断から、金利の設定は、各金融機関に任されることになった。市場原理つまり「需要と供給」の関係で金利が上下するようになった。このため日銀としても、「市場原理」に基づいて金利が動く仕組みを尊重して行動することにした。

金融機関の間では、資金が余っているところもあれば、一時的に資金が足りなくなるところもある。こういうとき、資金の足りない金融機関は、資金が余っているところから、翌日までの短期間、資金を借りる。

「おーい、資金を貸してくれ」と呼べば答え、「資金を返してくれ」と呼べば戻るようなものなので、「コール市場」と呼ばれる。

取引は短資(短期資金仲介会社)と呼ばれる専門の業者が手数料を取って仲介している。この貸し借りで、担保は取らない。取引は金融機関同士なので、いわば「信用」が担保だ。

ここでの金利水準を「コールレート」という。「無担保翌日物」「無担保オーバーナイト物」という言い方もされる。この金利はもちろん需要と供給の関係で決まる。資金が余っている金融機関が多数あれば金利は低下し、資金が足りない金融機関が多ければ金利は上昇する。

ということは、コール市場で貸し借りされる資金の量を上下させれば、金利水準もコントロールできる。現在の日銀はこれをしている。

このとき日銀は、望ましい金利水準を設定する。これを「誘導目標」という。マスコミでは「政策金利」と呼ぶ。日本銀行が実施する金融政策で目標とされる金利だからだ。

金利の誘導目標を実現するために行われること。それが国債の売買だ。

金融機関は、お客から預かった資金を運用するために、国債も買っている。

日銀がこういう国債を買い上げたら、日銀は代わりに現金を払うから、金融機関には現金が増える。そうなればコール市場で貸すことのできる資金も増える。コール市場に資金が増えれば、需要と供給の関係で金利は低下する。これを「買いオペレーション」という。

一方、日銀が持っている国債を金融機関に売ると、金融機関は現金を日銀に払うから、金融機関の手持ちの資金が減る。そこでコール市場で貸し出せる資金の量は減り、コール市場の金利は上昇する。これを「売りオペレーション」という。これが現在の日銀が実施している金利のコントロール方法だ。

参照、引用元:
「日銀を知れば経済がわかる」 池上彰 平凡社新書 



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