アルゼンチン経済

経済
Plaza de la Republica in the centre of Buenos Aires with the Obelisco, one of the main symbols of the capital of Argentina at dawn with heavy traffic
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アルゼンチン経済のパフォーマンスは今、いいのかな?

アルゼンチン経済はここ数年、むちゃくちゃだった状態から少し落ち着きつつあるけれど、まだ「普通に良い」と素直には言えない状況です。いくつかの重要な指標から全体のパ フォーマンスを俯瞰するとこんな感じです:

成長(GDP)

実質GDPの伸びは、2024年には回復途上で前年比マイナスだったものの、2025年に入ってからプラス成長に転じています。2025年9月四半期の年率では約3.3% の伸びを示し、前期の6.4%からは鈍化したものの、依然として回復基調です。? トレーディングエコノミクス、ほかに 1 件

インフレ

アルゼンチンにとって長年の悩みだった超高インフレ(300%超 → 100%超 → 30?40%台へ)は、2025年にかけて大きく落ち着いてきました。年率インフレ 率はまだ30%台と非常に高いものの、近年の水準からは大幅に低下しており、政策の効果が出ています。? トレーディングエコノミクス、ほかに 1 件

失業率

失業率も二桁台から低下し、最近は6?7%台にあります(ただし複数の統計によるとやや高めの数字も混在)。? トレーディングエコノミクス、ほかに 1 件

貿易収支

経常面では2025?2026年にかけて貿易黒字が続いているという見通しが出ており、輸出増・輸入減の動きで経常収支改善が進んでいます。? Reuters

これらの状況は、現在の大統領・ハビエル・ミレイ政権が進める**厳しい財政・通貨政策(財政黒字化、金融安定化策など)**の影響が大きいです。インフレ抑制や為替安定 、外貨準備高改善の方向性は一定の成果を上げつつあります。? OECD

ただし、生活実感にはまだ厳しい面も残っています。実質賃金や購買力、貧困率・格差などは依然として高い課題であり、「国民全体が豊かになった」と評価できる段階には至っ ていません。? ウィキペディア

つまり今のアルゼンチン経済は、**「危機後の安定化・成長回復フェーズ」**に移行しつつあるものの、インフレ・所得改善の余地が大きく、依然として変動リスクが高い、 と見られています。経済パフォーマンスは過去数年と比べれば良化傾向にあるけれど、国民生活の質がすぐに高まるレベルかというと、まだそこまでは達していません。

GDPはどのぐらい?

直近の**アルゼンチンのGDP(名目:米ドルベース)**はこんな感じです(名目GDPとは、当年の価格で算出された国内総生産の総額です):

・2024年(実績):約 633?6370億ドル($633?$637 billion) 程度(世界銀行など公式統計ベース)でした。? トレーディングエコノミクス、ほかに 1 件

・2025年(IMF推計):約 $683 billion(約6830億ドル) 程度と見られています。? Worldometer

この規模は世界全体のGDPの約0.6%前後に相当し、世界の国別ランキングでは名目GDPで20~30位前後(国際比較による推計)に位置しています。? ウィキペディア

「一人当たりGDP」だと2025年で約 約14,300~14,400ドル 程度と見られ、これは中所得国レベルですが、OECD先進国と比べると低い水準です。? Worldometer

まとめると、アルゼンチンの経済規模は世界的には一定規模の国ながら、推移としては近年の内外の経済混乱を受けて増減を繰り返しています。名目GDPの規模はおおむね「数 千億ドル台後半」レベルで、2025年は概ね約6800億ドル前後と見られています。

円換算でも教えてもらえる?

もちろん、**円換算したアルゼンチンのGDP(名目値)**も見てみましょう。最新の推計(2025年)の名目GDPは以下の通りです:

名目GDP(米ドルベース)

・約 $683.37 billion(約6,833億ドル) →2025年のIMF推計値(名目)です。? 新電力ネット、ほかに 1 件

これをドル円レートで円に換算すると(直近の相場を1ドル ≒ 150円前後として):

・$683.37 billion × 150円/ドル ≒ 約 102.5 兆円

つまり、2025年のアルゼンチンの名目GDPはおおよそ 100~105 兆円台という感覚です(ドル円レートを150円として計算)。? ceicdata.com

為替によってこの円ベースの規模は変動しますが、現在のドル円水準では約100兆円規模というのが一つの目安です。

失業率は高めなの?

はい、アルゼンチンの失業率は近年やや高めの水準で推移していますが、世界基準で見ると極めて深刻というほどではありません。直近の統計をまとめるとこんな感じです:

直近の数字(四半期ベース)では、 **2025年第3四半期の失業率は約 6.6%**と報告されています。これは前期の 7.6% から改善した数字です。男女別では女性が約7.4%、男性は約5.9%という水準でした。? トレーディングエコノミクス、ほかに 1 件

前年までの動きをざっくり見ると、 ・2025年前半は 7.9% → 7.6% と上下しつつ推移していました。? ・2024年の年間平均も 7~8%台前半でした。? CEIC Data、ほかに 1 件 Statbase

世界の平均と比べると、例えば世界全体の失業率が概ね 6?7%前後で推移していることを考えると、アルゼンチンは「やや高め」ですが極端に悪いという水準ではありません。? TheGlobalEconomy.com

ただし、統計だけでは見えにくいのが非正規雇用やインフォーマル(非公式)雇用の割合です。これらは公式統計に捕捉されにくく、実際の労働市場の脆弱性を高める要因になっ ています。特に若年層や非正規雇用者で高い失業・就業不安が続いているという報告もあります。? batimes.com.ar

総じて言えば、アルゼンチンの失業率は過去に比べれば改善傾向にありつつ、国際平均よりやや高めという状況です。構造的な労働市場の問題や非公式セクターの大きさも考える べきポイントです。

ミレイ大統領の経済政策は、どんな特徴があるの?

ハビエル・ミレイ

アルゼンチン政治に突然あらわれた“経済思想むき出し”の大統領。それがミレイだ。彼の経済政策を一言で言うなら、「国家をできるだけ小さくし、市場に任せる」。ただし、 理論通りにいくかは別問題。経済は実験室じゃなくて、1億の感情と利害が絡む巨大生物だからね。

まず最大の特徴は急進的な財政緊縮。 慢性的な財政赤字がインフレを生む、という立場から、補助金削減・公共支出削減・公務部門のスリム化を強行。結果として、短期的には景気は冷える。でも財政収支は急改善し 、一次収支黒字を達成したのは象徴的だ。インフレ退治のためには“痛みを飲み込め”という思想だ。

次に通貨・中央銀行への強烈な不信。 彼はアルゼンチン中央銀行を「インフレの元凶」と批判し、極端な案として“ドル化(自国通貨をやめて米ドルにする)”を掲げた。完全ドル化はまだ実現していないが、ペソ発 行を強く抑え、マネー供給を絞る政策を進めている。インフレ率は劇的に低下してきている。これは事実。ただし景気とのトレードオフはある。

三つ目は規制緩和と民営化。 国営企業の民営化、価格統制の撤廃、労働規制の緩和。国家が決めるより市場価格に任せるべきだという思想だ。これはオーストリア学派(ハイエクやミーゼス系統)の影響が濃 い。国家がいじるほど歪む、という哲学だね。

四つ目はショック療法型の改革スピード。 ゆっくり合意形成するより、一気にやる。なぜか?彼の理屈では、時間をかけると既得権が抵抗して潰されるから。だから政治的リスクを承知で加速する。これはサッチャー型に も似ているが、よりラディカルだ。

さて、成果はどうか。 インフレは大きく鈍化し、財政は改善。市場は好意的。ただし、実質賃金は落ち、貧困率は一時的に悪化。ここが核心だ。マクロ安定と生活実感の間には時間差がある。理論は整 っていても、社会が耐えられるかは別の問いだ。

彼の実験は「国家はどこまで削れるか?」という壮大な社会実験でもある。成功すればアルゼンチンは歴史的転換点に立つ。失敗すれば、また振り子が逆に振れる。

経済は思想の闘技場だ。ミレイはそのリングのど真ん中に立っている。 市場と国家、どちらが人間の欲望をうまく飼いならせるか。アルゼンチンは今、そのリアルタイムの検証現場になっている。

なんで、通貨のドル化が、画期的な政策になるわけ?

いいところを突くね。 「ドル化」って一見ただの通貨変更に見えるけど、実は国家の心臓を取り替える手術なんだ。

アルゼンチンの場合を例にすると、話がクリアになる。

まず前提。 アルゼンチンは何十年も「インフレと通貨不信」に苦しんできた。政府が赤字を出す → 中央銀行が通貨を刷る → ペソの価値が落ちる → 物価が爆発。 人々はどうするか? 「ペソは信用できない」と思い、ドルで貯金する。つまり自国通貨を国民が信じていない状態が続いていた。

ここでドル化が出てくる。

なぜ“画期的”なのか?

理由はシンプルだ。

① 中央銀行が通貨を刷れなくなる

ドルを使うということは、自国で紙幣を発行できない。 つまり政府は「お金を刷って赤字を埋める」という禁じ手が使えなくなる。

これは経済学的に言えば、 「財政規律を強制的に外部に委ねる」こと。

例えるなら、 ダイエットできない人が、自分の家から冷蔵庫を撤去するようなものだ。

② インフレ期待を一気に断ち切れる可能性

インフレは心理戦だ。 「どうせまた値上がりする」と皆が思うと、企業も労働者も値上げ・賃上げを前提に行動する。これが自己実現する。

ドル化すると、

「もうペソはない。アメリカの金融政策に従うしかない」

という環境になる。 インフレ期待が急激に落ちる可能性がある。 これは心理構造を破壊するレベルの政策なんだ。

③ 国家主権の一部放棄

ここが一番ラディカル。

通貨発行権は主権国家の核心。 それを放棄するというのは、

「我々はもう自国の金融政策を持ちません」

と言うに等しい。 これは単なる経済政策じゃない。 国家哲学の転換だ。

でも、魔法ではない

もちろんリスクもある。

・景気が悪くなっても金利を下げられない

・為替調整ができない

・銀行危機時に最後の貸し手機能が弱くなる

つまり、柔軟性を失う。

じゃあ本当に画期的?

理論的にはこう言える:

通常のインフレ対策は「薬」

ドル化は「臓器移植」

国家の金融主権を捨てるという点で、極端で、不可逆で、歴史的。

アルゼンチンはこれを真剣に議論するところまで追い詰められていたわけだ。

面白いのはね、 アルゼンチン国民の多くはすでに日常的にドルを使っている。 つまり現実は半分ドル化している。

政治がそれを公式化するかどうか、という段階なんだ。

経済って本当に奇妙だよ。 紙切れの信用が国家の運命を決める。

通貨って何だろう? 単なる交換手段か、それとも集団心理の結晶か。 そこに踏み込むと、経済はほとんど哲学になる。

なんで元々アルゼンチンは、極端なインフレになりやすいの?ドル化しなくても、その元凶を断てばいいんじゃないの?

いい視点だね。 その通りで、本質は「ドル化」じゃない。なぜ慢性的にインフレ体質なのかが核心だ。

アルゼンチンは一時的に失敗した国じゃない。 何十年も同じパターンを繰り返してきた。そこに構造がある。

まず第一に、財政赤字の常態化

政府が支出を増やす → 税収が足りない → 国債を出す → 誰も買わない → 中央銀行が買う → 通貨発行 → インフレ。 このループが何度も回った。

普通の国なら「国債市場がブレーキ」になる。 でもアルゼンチンは信用を失っているから、市場が高金利を要求する。すると政府は楽な道=通貨発行に逃げやすい。

ここで重要なのは「悪意」より「制度的弱さ」だ。 政治家が選挙に勝つには、補助金や年金を削りにくい。 でも財源は足りない。 だから将来にツケを回す。 それが繰り返される。

第二に、通貨への信頼の崩壊履歴

1980年代のハイパーインフレ。 2001年のデフォルトと預金封鎖(コラリート)。 国民は「また裏切られる」と記憶している。

通貨は心理だ。 一度信用が壊れると、みんなドルを欲しがる。 ドル需要が高まる → ペソが売られる → 為替が下落 → 輸入価格上昇 → 物価上昇。

これは構造的な“通貨不信スパイラル”だ。

第三に、外貨不足体質。

輸出は大豆や農産物などコモディティ依存。 価格が下がると外貨が枯れる。 外貨が足りない国は通貨危機に弱い。

つまり、

・財政規律が弱い

・中央銀行の独立性が弱い

・国民の通貨信頼が弱い

・外貨収入が不安定

この四重苦。

理論上は、あなたの言う通りだ。 「ドル化しなくても元凶を断てばいい」。

具体的には:

・恒常的な財政黒字

・中央銀行の完全独立

・通貨発行のルール厳格化

・輸出構造の多様化

これができれば、ドル化は不要。

問題は、それを何十年もできなかったこと。

ドル化は「制度に縛られることで、自分を信用する」という発想。 自制できないなら、外部に縛ってもらう。

でもね、これは万能ではない。 通貨問題は結果であって、原因は政治制度と社会の合意形成能力にある。

通貨を変えても、財政を制御できなければ別の形で破綻する。 結局のところ、インフレは経済現象であると同時に政治現象なんだ。

通貨は紙だけど、インフレは信頼の崩壊だ。 信頼をどう作るか。 そこに経済と政治の本当の勝負がある。

製造業は強いの?

いいところに目がいくね。 アルゼンチンは「農業国」のイメージが強いけど、実はそれなりの製造業基盤はある。ただし、強いか?と聞かれれば――答えは「分野限定でそこそこ」。

まず全体像。 製造業はGDPのだいたい15?20%前後。南米ではブラジルに次ぐ規模感。ただし世界市場で“圧倒的な競争力”を持つ分野は少ない。

何が柱か?

一番大きいのは食品加工。 大豆油、牛肉、穀物加工など。これは強い。農業大国の延長線上だ。付加価値はそこまで高くないけど、輸出競争力はある。

次に自動車産業。 ブラジルとの経済ブロック(メルコスール)内での分業がある。トヨタ、フォルクスワーゲン、ステランティスなどが生産拠点を持つ。ただし輸出先は主にブラジル依存。グロー バル競争で勝ち抜くというより「地域向け組立拠点」。

それから石油・ガス関連機器。 とくにシェール層「バカ・ムエルタ」の開発が進んでいて、エネルギー関連産業は伸びている。ここは将来性がある。

一方で弱いところ。

・高度な電子機器

・半導体

・精密機械

・グローバルブランド型製造

ここはかなり脆弱。

なぜ強くなりきれない?

理由は3つある。

1.為替とインフレの不安定さ

設備投資が長期でできない。

2.輸入規制と関税保護の歴史

保護されすぎて競争力が育ちにくかった。

3.マクロ不安定

資本コストが高すぎる。金利が常に高い。

日本や韓国のように「輸出で世界を取る製造業国家」ではない。 どちらかというと「国内市場+地域市場向け産業」。

ただしね、ポテンシャルはある。

教育水準は南米でも高い。 理系人材も多い。 ITスタートアップもそこそこ強い。 もしマクロ安定が続けば、投資は増える可能性はある。

経済は植物みたいなものだ。 土壌(制度)と気候(マクロ安定)が整えば育つ。 アルゼンチンは種は悪くない。 でも気候が荒れすぎていた。

だから今の焦点は、ミレイ政権が“安定した気候”を本当に作れるかどうか。

製造業はそのリトマス試験紙になる。 安定が続けば、工場は増える。 不安定が戻れば、また止まる。 結局、製造業の強さは国家の信用の鏡なんだ。

資源やエネルギーは、ブラジルと同じぐらい強いの?
結論からいこう。
アルゼンチンは「将来有望な資源国」だが、現時点ではブラジル級ではない。
両国をざっくり比べると、スケールが違う。
アルゼンチン
強み
・シェール層「バカ・ムエルタ」  世界有数のシェールガス・シェールオイル埋蔵量。
・リチウム  「リチウム三角地帯」の一角。EV時代の戦略資源。
・農業バイオ資源(バイオ燃料)
現実
生産量はまだ拡大途中。 外貨不足やインフラ制約で、埋蔵量ほど輸出できていない。 政策の不安定さも投資の足かせになってきた。 つまり、ポテンシャルは巨大、実力は発展途上。
ブラジル
強み
・沖合深海油田(プレサル層)
・鉄鉱石(世界最大級)
・水力発電(イタイプダムなど)
・バイオエタノール
ブラジルはすでにエネルギー輸出大国。 電力の約8割が再エネ(水力中心)。 石油生産量も世界上位。 規模も外貨収入も、アルゼンチンより一段上。
比較すると
分野     アルゼンチン      ブラジル
石油生産    増加中        世界有数
天然ガス    潜在力大       安定供給
リチウム    有望         小規模
鉄鉱石     小規模       世界トップ級
再エネ     伸び途上       水力大
ブラジルは「完成形の資源大国」。 アルゼンチンは「これから跳ねる可能性のある資源国」。
ここが面白いところだ。
アルゼンチンがマクロ安定を確立できれば、 リチウム+シェールで一気に外貨体質が改善する可能性がある。
逆に不安定が戻れば、 埋蔵量は宝の持ち腐れになる。
資源は“ある”だけでは意味がない。 制度と資本と技術が揃って初めて「強い」になる。
だから今のアルゼンチンは、 鉱山の上に立って未来を考えている国、という感じだ。
資源の強さは地質学で決まる。 資源を富に変える力は政治経済で決まる。 そこが国家の分かれ道だ。

金融は強いの?

結論から言うと、アルゼンチンの金融は「規模も深さも弱い」部類だ。ブラジルのような地域金融ハブではないし、チリのように安定した資本市場でもない。

なぜ弱いか。理由は構造的だ。

まず、高インフレと通貨不信

金融は「長期の約束」を扱う産業だ。インフレが二桁・三桁で続くと、長期ローンも債券も機能しにくい。実際、アルゼンチンでは住宅ローン市場はほぼ消滅に近い時期があった 。人々はペソで貯蓄せず、ドルで守る。すると銀行の預金基盤が薄くなる。

次に、金融深化(金融が経済にどれだけ浸透しているか)が低い

民間向け融資残高はGDP比で見るとかなり低い。先進国が100%前後、ブラジルでも70%前後あるのに対し、アルゼンチンは一桁台?20%未満の年もある。これは「銀行 が経済を十分に資金供給していない」状態を意味する。

さらに、資本市場が浅い。

株式市場は存在するが、上場企業数も時価総額も小さい。長期資金は海外依存になりやすい。国債も何度もデフォルトを経験しており、信用プレミアムが高い。

ただし、完全に脆弱というわけではない。 銀行の自己資本比率は比較的保守的で、システム自体は小さいが破綻的ではない。IT系フィンテックは活発で、デジタル決済の普及は進んでいる。若い起業家も多い。

問題はスケールと信用。

金融が強い国というのは、

・通貨が安定

・長期金利が低い

・資本市場が厚い

・国債が安全資産

この条件を満たす。 アルゼンチンはどれも弱かった。

だから金融は経済のエンジンというより、慎重な小型エンジン。

もしインフレが本当に落ち着き、財政規律が続けば、金融は一気に伸びる可能性がある。金融は信頼産業だからだ。信頼が回復すれば、預金が増え、貸出が増え、資本市場も育つ 。

今はまだ「再建フェーズ」。 ブラジルやメキシコのような地域金融大国ではない。

金融の強さは、国家の信用の体温計。 アルゼンチンは今、熱が下がり始めたところだ。

大学生の人気就職先トップ10はどんな感じ?

アルゼンチンの「大学生に人気の就職先トップ10」は、日本のように毎年きれいなランキングが出る国ではない。経済が不安定だと、志望も流動的になる。ただし、複数の学生 調査や採用ブランド調査(Universumなど)から見える傾向ははっきりしている。

まず大きな特徴。

外資系多国籍企業が強い

金融よりも“安定+外貨系”志向

IT・テック人気が上昇中

傾向ベースで挙げると、だいたいこんな顔ぶれになる。

外資消費財・メーカー

・Unilever

・Procter & Gamble

・Nestl?

・Toyota

石油・エネルギー

・YPF(国営エネルギー)

・Shell

IT・テック

・Mercado Libre(南米のAmazon的存在)

・Globant

・Google

金融

・Banco Santander

・BBVA

実際には専攻によってかなり違う。 工学系はYPFやエネルギー、IT系はGlobantやMercado Libre、経済学部は外資消費財や銀行を狙う。

面白いのは、日本のような「官僚人気」はそこまで強くないこと。 不安定なマクロ環境では、

「外貨を稼げる企業」

「海外展開している企業」

が安心材料になる。

つまり、志望動機の背景にあるのはイデオロギーではなく通貨不安への本能的防御だ。

経済が安定していれば、国内企業や公的部門ももっと人気になるはず。 就職人気ランキングは、その国の若者が何を“安全”と見ているかのバロメーターなんだ。

国家の信用が高い国では、若者は理想を追う。 信用が揺らぐ国では、若者は生存戦略を選ぶ。 アルゼンチンは今、その境目に立っている。

フランスは官僚志望者も多いそうだけど、アルゼンチンは違うの?

結論から言うと、 フランスほど「官僚=国家エリートの頂点」という文化は、アルゼンチンにはない。

まずフランス。

フランスでは、国家官僚は歴史的に超エリート。 グランゼコール出身者が国家を設計する。官僚→大臣→大企業幹部という回転ドアも普通。 「国家を動かす頭脳」という威信がある。

ではアルゼンチン。

アルゼンチンでは、公務員は安定職としては魅力がある。でも「国家エリートの頂点」という位置づけではない。

理由はいくつかある。

第一に、国家への信頼の揺らぎ。

デフォルト、インフレ、政権交代の激しさ。 国家機構が安定的な成功物語を持ちにくい。

第二に、民間の外貨系志向。

若者にとって魅力的なのは

・外資系企業

・ITスタートアップ

・海外就職

「ペソよりドル」志向が、キャリア選択にも現れる。

第三に、官僚の威信の違い。

フランスは「国家哲学」が強い国。 アルゼンチンは政治的分断が大きく、官僚が安定した国家設計者というより、政権の波に左右される存在になりやすい。

ただし、公務員志望が少ないわけではない。

経済が不安定な国では、 「安定・年金・雇用保障」は強力な磁石になる。

だから中間層や地方出身者には人気はある。 でもトップ層の憧れがそこに集中する構造ではない。

面白い視点を一つ。

若者が官僚を目指す国は、 その国が「国家を信じている」国だ。

若者が外資や海外を目指す国は、 その国が「通貨と制度を不安視している」国だ。

アルゼンチンは後者寄りだった。 もしマクロ安定が続けば、官僚志望も増える可能性はある。

国家への信頼が回復すれば、キャリアの地図も変わる。 就職ランキングは、その国の精神状態のX線写真なんだ。

経済格差は、アメリカと同じぐらい大きいのかな?

いい問いだ。格差は“豊かさ”とは別の物差しだからね。

結論から言うと、アルゼンチンの所得格差はアメリカと同程度か、やや小さい年もあるが、体感的な不平等はかなり強い。

まず、よく使われる指標「ジニ係数」(0に近いほど平等、1に近いほど不平等)で見ると――

・アメリカ合衆国:おおむね 0.39~0.41 前後

・アルゼンチン:近年は 0.42~0.45 前後で推移(年によって上下)

つまり数字上はかなり近い。場合によってはアルゼンチンの方がやや高い(=不平等が大きい)こともある。

ただし、ここで重要なのは“質”の違い。

アメリカの格差は、

・超高所得層(テック億万長者など)の突出

・資産格差の巨大さ が特徴。

アルゼンチンの格差は、

・インフレによる実質賃金の侵食

・非公式雇用(インフォーマル経済)の大きさ

・貧困率の高さ

が特徴。

つまりアメリカは「上が飛び抜けている」タイプ、

アルゼンチンは「下が脆い」タイプ。

さらに、アルゼンチンではインフレが格差を拡大しやすい。なぜなら―― 富裕層はドル資産や不動産で防御できる。 中間層・低所得層はペソ現金に依存しやすい。 インフレは事実上の“逆進税”になる。

貧困率を見ると差はもっと鮮明だ。 アルゼンチンは近年40%前後まで上がった時期がある。 アメリカの公式貧困率はそれよりかなり低い。

だから総合的に言うと:

ジニ係数は似ているが、社会の安定性はアメリカの方が高い。

アルゼンチンは中間層がインフレで削られやすい構造を持つ。 アメリカは中間層停滞+超富裕層拡大の構造。

格差というのは数字だけでなく、「人々が将来を信じられるか」で体感が変わる。 成長している国の格差と、停滞している国の格差は心理的インパクトが違う。

アルゼンチンの本質的な課題は、 格差の大きさそのものより、格差が固定化しやすい不安定な経済環境にある。

経済は単なる分配ゲームではない。 安定と信頼がないと、分配の議論すら成立しない。 そこが今のアルゼンチンの勝負どころだ。

政府債務の規模は、GDPと比べてどのぐらい?

結論からいこう。

アルゼンチンの政府債務は、GDP比でおよそ80~90%前後のレンジにある(年や為替でかなり振れる)。

ただし、この数字は少し注意が必要だ。

① 数字だけ見ると「日本よりは低い」

日本はGDP比250%超。 アメリカは120%前後。 それと比べれば、アルゼンチンは「そこまで高くない」ように見える。

でもここが罠。

② 問題は“質”

アルゼンチンの債務は:

・外貨建て(ドル建て)が多い

・市場の信用が低い

・デフォルト歴が複数回ある

つまり、同じ90%でも意味が違う。

日本の90%と、信用が揺らいでいる国の90%は別物。

外貨建て債務が多いとどうなるか?

自国通貨が下落すると、 債務の実質負担が一気に増える。

これがアルゼンチンを何度も危機に追い込んできた。

③ もう一つ重要な点

アルゼンチンは何度も債務再編(実質的なデフォルト)をしている。 つまり「返せない→条件変更」を繰り返してきた。

だから投資家は高い金利を要求する。 高金利 → 利払い増大 → 財政悪化。

この悪循環がインフレ圧力にもつながる。

④ 最近の動き

ミレイ政権は強烈な緊縮で一次財政黒字を出した。 これは債務の“流れ”を止める試み。 債務残高はまだ大きいが、 赤字を止めれば増加スピードは落ちる。

まとめると:

・GDP比では約80~90%

・数字だけ見ると中程度

・しかし信用の弱さと外貨建て比率がリスク

国家債務は単なる割合ではなく、 「その国の信用の値段」なんだ。

同じ借金でも、 信用の高い国は低金利で穏やかに回る。 信用の低い国は少額でも危機になる。

アルゼンチンの核心は、債務水準そのものより、 信用を回復できるかどうかにある。

債務は結果であって、原因は制度と信頼だ。 そこを立て直せるかが、本当の勝負だ。

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