25年12月

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25.12.13 読書録 垂秀夫さんの本

相変わらず何かと騒がしい対中国関係ですが、数か月前にすでに読み応えのある対中関係本が出ています。元中国大使の垂秀夫さんによる回顧本です。

言うべきことは言う、確かに硬骨漢的な外交官ぶりが十分伝わってきます。ただ、中国の高官相手に、いつも戦闘モードで日本の主張を突き付けているかというと、それは全然違います。対中強硬派というわけではなく、あくまでも知中派として、中国で出会う人々と歓談を重ねながら、中国を知り尽くした上で、どうしても言うべきことは言うべきタイミングで言う、というスタイルが感じられました。

垂さんは外交官の仕事をしながら普通に出会える中国の外交官、中国共産党の高官とばかり親交を深めるのではなく、常に裏の人脈の開拓に勤しんできたのだそうです。それだけに垂さんの情報はディープで時に素早く、垂さんが報告する情報には、日本の外務省の幹部たちもうならされていたようです。

まあすみません、細かいところは忘れてしまいましたが・・・(汗)一番印象に残ったところは何といっても最後の、台湾に関する分析です。

垂さんは、中国の台湾進攻が近いとは、必ずしも考えておられないのです。

習近平にとって「台湾統一」のレガシーとは、いわゆる軍事的制圧ー中国人民解放軍が台湾に上陸し、台湾総統府を占領し、中国国旗「五星紅旗」を総統府に掲げることーでは必ずしもない、ということだ。この点について、日本メディアや多くの日本人専門家の認識は根本的に間違っている。・・・P464

最も恐ろしい事態は、(台湾の)ポピュリスト政治家がポッと出てきて総統に当選し、「歴史に名を残す」ことを狙おうとすることだ。もし中国の口車に乗せられて、台湾総統として中国国家主席と「平和的統一」のアグリーメントにサインしてしまったら、それは強い効力を持つ。次の総統に代わったとしても、台湾はそのアグリーメントに縛られてしまうわけだ。これは考えうるシナリオの中で最も恐ろしいものである。

もちろん、台湾の識者はこの危険性に気付いている。蔡英文の最側近の一人も、「平和的アグリーメントが最も怖い」と私に打ち明けたことがある。

逆に習近平にすれば、これこそが最も望ましいベストシナリオである。これがまさに中国が考える「平和的統一」の意味なのだ。・・・P464~P465

また、周知のとおり中国は不動産バブル崩壊で経済が不振であり、今台湾進攻を起こして世界から経済制裁を食らってしまったら、ますます経済運営がおぼつかなくなります。国民の中に多少たまっている不満は、習近平の目には、「統制された国内における一部の例外」ぐらいにしか見えていないのだそうです。だから、国民の不満をそらすための侵攻、というシナリオも説得力に欠けるそうです。

人民解放軍には汚職も蔓延しており、戦争をうまく遂行できるほどの状態ではない、という見方もできます。

・・・しかし、(習近平は)2018年に国家主席の任期制限を撤廃したことで、実質的な任期はなくなった。ならば生きているうちにじっくりと「平和的統一」の道筋をつければいいのだから、あわてて武力統一しなければならない理由は何もない。そう私は分析している。・・・P471

ただし、台湾が度を越した挑発をしてきた、と中国共産党がみなせば、一番危険性が高いのは、「海上封鎖」の可能性だそうです。

「平和的アグリーメント」と「海上封鎖」、これを防ぐことに今後は注力したいと、垂さんは述べておられます。

25.12.13 続けて読書録 神田真人さんの本

続けて元財務官の神田真人さんの本です。いろいろ面白い話は載っていますが、やはり一番読みごたえがあると思ったのは、終盤の日本経済分析です。

・日本は長らく、貿易と投資の両輪で黒字を稼いできたが、貿易が赤字基調になってしまい、投資収益だけで経常収支の黒字をキープしている状態になっている。

・企業も投資家も、対外投資の繰り返しが多く、日本国内への投資が少ない。

・黒字の稼ぎ手産業が、自動車や一部の半導体関連に限定されている。

・円安でも輸出が増えにくくなっている。

・日本が持続可能な財政構造の構築に向け努力している印象が薄れるなら、いずれ海外格付け会社による日本国債の格下げも現実味を帯びかねない。

・経済の新陳代謝を高め、生産性や成長力の高い分野に労働力や資本をシフトする必要がある。





 

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