グローバリズム VS ナショナリズム

グローバリズムが最初に興隆したのは19世紀末から20世紀はじめと言われている。

19世紀を通じてヨーロッパは勢力均衡の状態を成し遂げたと言われ、平和が長く続いた。産業革命に伴う種々の技術革新が続き、特に鉄道、蒸気船、冷凍技術、電信などが長距離間の貿易を加速させた。あとはイギリスの力が大きい。イギリスが海洋覇権を築き、本国‐植民地間を中心に自由貿易体制を築いた。ポンドを基軸通貨とする金本位制の国際通貨制度も確立していた。他のヨーロッパ諸国も、これらイギリスが敷いたグローバルなプラットフォームに乗っかる形でグローバルビジネスを展開できた。

ケインズがこんな記述を残している。

「1914年に終わりを告げたこの時代は人間の進歩の中でなんという異例のエピソードであったことか! ・・・ロンドンの住人は、ベッドで朝の紅茶をすすりながら、電話で全世界のさまざまな産物を注文することができた。同じように、彼は自分の富を、世界の天然資源や新事業の投資に好きなように振り向けることができたし、少しも心煩わせることなく、その果実や利益の分け前にあずかることができた。」

実際にはケインズの言ったとおり、1914年に始まった第一次世界大戦によりこの国際経済は断ち切られ、また1929年からの世界大恐慌により完全に破綻してしまった。

ところが1991年のソ連崩壊後の現代は、まさに第二次グローバリズムの時代と言われている。旧共産圏が世界の資本主義圏に組み入れられ、グローバル経済に乗り遅れるな、という風なことが特に90年代、盛んに喧伝された。

世界各国において、貿易に強い会社はグローバル取引で巨額の利益を手に入れるチャンスが訪れる一方、グローバル企業は安い労働力を求めて、国境を越えて拠点を移動させるようになる。日本で「産業の空洞化」とか「格差社会」と言われたのも、グローバル化が大きな原因の一つになっている。

アメリカでトランプ大統領を生み出した「トランプ現象」、これもグローバル経済の恩恵にあやかれない旧来型の産業労働者の多くがトランプを支持したため、等と言われている。

ナショナリズムはとにかく自分たちの国を大事にしよう、自分たちの国の文化・伝統、自分たちの国の経済、そういったものを世界の何よりも重視しようといった考え方である。

国内経済を委縮させるグローバリズムには問題が多いから、ナショナリズムをもっと大事にするべきなのか?しかしだからと言って、世界中で最大の利益を上げようとするグローバル企業にわざわざブレーキをかけてもいいのか?みなさんはどう思われるだろうか?

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