政治主導は進んだのか!?

政治主導は進んだのか!?という問題意識について、ここ10数年議論されることがある。相変わらず官僚の力が強すぎて、政治主導は大して実現していないという見方・・・、あるいは内閣人事局で官僚が官邸への忖度を強めるようになり、「悪い政治主導」が進んだという見方・・・、様々あるだろうが、総じて、少なくとも平成の前半までの時代と比べたら政治主導は進んでいると私は考える。

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小選挙区・比例代表並立制

1994年に選挙制度が中選挙区制から小選挙区比例代表並立制に変更されたことによって、政党の公認権、つまりは政党が政治家を候補者として公認するかどうかを決定する権利の重要性は格段に高まった。

かつて中選挙区制の下では、自民党政治家にとって党から公認されることは、それほど重要ではなかった。保守系無所属として当選することが比較的容易だったからである。

中選挙区制の下では、一部の例外を除き、一選挙区から3人から5人の国会議員が選出される。多くの選挙区では、複数の自民党候補同士が競い合う場合、彼らが自民党から公認されているという事実はそれほど重要な意味を持たなかったのだ。むしろ、当選するためには、候補者個人の魅力を有権者に訴える方が有効であった。保守系無所属の候補者は、当選を果たせば、追加公認という形で、自民党入りを認められるのが常であった。

これに対して、小選挙区・比例代表並立制では、政党から公認されるかどうかが政治家にとっては当選するために死活的に重要な意味を持っている。比例代表制では、名簿に記載されなければ当選できないので、党の公認が重要であることは言うまでもない。小選挙区制でも、公認が重要なのは、無所属で出馬した場合に当選することが、中選挙区制に比べてはるかに難しくなったためである。

小選挙区制では、一選挙区から1人の国会議員しか選出されない。このため、各政党は候補者を一人しか公認しない。各政党の公認候補は候補者個人の資質以上に、政党の主張を訴えることが選挙戦の中心となる。このような選挙戦の中で、無所属候補者が当選することは非常に難しい。また、現在の公職選挙法では、使える選挙用のポスターや葉書の数などの上でも、公認候補者の方が無所属候補者に比べ、優遇されていることも、無所属候補者の当選を難しくしている。

こうして、党の公認権が重みを増したことは、総裁と個々の自民党の政治家の関係を決定的に変質させた。新しい選挙制度では、無所属として当選することが難しくなったため、総裁は個々の政治家の生殺与奪権を握っていると言っても過言ではない。総裁は公認権を利用して、自分の意向に従うように自民党の政治家をけん制することができるようになったのだ。

政治資金規正法の改正

また1994年の政治資金規正法の改正以前は、政党以外の政治団体も企業・労働組合などから企業・団体献金を集めることができた。しかし改正以降は政党以外の政治団体は、企業・団体献金を集めることができなくなった。

また、個人や企業・団体が献金を行った場合、かつては年間100万円以上になった場合に限り公表する義務があったのに対し、1994年の政治資金規正法改正以降、献金の額が年間5万円以上を超えると、公表する義務を課せられるようになった。

こうして、企業・団体献金が禁止される一方、政治資金の透明性が増したため、政治家や派閥が政治資金を集めることが以前に比べはるかに難しくなった。

政治改革以後、政治家や派閥が政治資金を集めにくくなる一方で、政党が政治資金を集めることは格段に容易になった。政党助成法が制定され、政党への公的助成制度が導入されたためである。政党助成制度では、毎年、国家予算から、国民一人当たり250円に相当する資金が政党交付金として政党に配分されている。

こうして、自民党の政治家は政治資金の配分を受ける意味でも、総裁への依存度を強める。政治資金を十分に集められなくなったことによっても、各派閥の求心力は失われていったのである。

上記のような改革の結果、自民党内でかつては分散していた権力は、総裁=首相に集中するようになっている。首相は公認権や政治資金配分権を効果的に用いることができる一方、閣僚人事権、執行部人事権をともに掌握している。

参照、引用元:「首相支配」中公新書







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