議員立法

発議要件

議員提出法案にとっての最大の難関は、国会法に規定されている議案の発議要件である。国会法56条1項は次のように規定する。

「議員が議案を発議するには、衆議員においては議員20人以上、参議院においては議員10人以上の賛成を要する。但し、予算を伴う法律案を発議するには、衆議員においては議員50人以上、参議院においては議員20人以上の賛成を要する。」

立法補佐機構
立法府たる国会には、議員立法を補佐するための機関として、アメリカの連邦議会に範を仰いだ、①議員法制局、②委員会調査室、③国立国会図書館が設けられている。また、議員の活動全般を補佐するものとして、議員秘書が付されるとともに、議員会館内に事務室が提供される。
与党議員が立法を行おうとする場合、内閣提出法案として官僚に提案させるか、自らが提出者となる場合も、官僚に協力を求め、活用することができる。しかし野党議員にとっては、自らあるいは所属政党の力だけで立案するのは容易なことではない。その意味で、上記①~③の立法補佐機関は、主として野党議員のために存在している性格が強い。
a 議院法制局
議員の法制に関する立案に資するため、両議院にそれぞれ議員法制局が置かれている。法制局長の下、80名ほどの定員を有している。
議院法制局は、議員からの求めに応じて、政策立案から条文作成まで法制局が参画することで、内閣提出法案の場合の政策立案、法案作成における各省庁の役割と、法案審査における内閣法制局の役割を併せ持つことになる。
内閣法制局審査と違い、法案の提出にあたって議院法制局の審査は条件ではないが、ほぼ全ての議員提出法案に議院法制局は関わっている。
b 委員会調査室
委員会調査室として、両議院にそれぞれ、議院運営委員会と懲罰委員会を除く各常任委員会毎の調査室と、特別委員会を担当する特別調査室が置かれている。各室は、室長、主席調査員、調査員5~10名程度で構成され、衆議員調査局は360名ほど、参議院調査室は250名ほどの定員となっている。
任務としては、委員会決議や委員会報告書の原案の作成、委員会提出法案の起草のための調査など、また、内閣提出法案の審査に際して、その問題点の整理を中心に議員への助言や参考資料の作成などである。所管行政分野について、省庁から幅広く資料を集めており、野党議員の質問作成の補佐をすることも多い。
c 国立国会図書館
国立国会図書館は、国会図書館であるとともに、我が国における中央図書館であり、蔵書数は図書988万7,050冊、逐次刊行物1484万6,587点(2011年度末)を誇っている。
国会の立法補佐機能を担うのは、その中の調査及び立法考査局であり、局長、次長の下、政策分野別に調査室・課などが置かれ(それぞれ5~10名程度の調査員を配置)、190名弱の定員である。主に内外の法制度の資料収集や研究を行っており、学問的、理論的色彩が強い。
d 議員秘書
国会議員には、国費によって、2名の秘書と、1994年から主として議員の政策活動及び立法活動を補佐する1名の政策担当秘書を付することとされている。またこの他、議員個人がその給与などを負担する私設秘書もいる。秘書は、議員会館内等の東京での事務所の他、選挙区内の地元事務所に駐在している。
秘書の仕事は、①政務…選挙区住民や支援団体からの相談への対応、関係省庁への陳情の手配や同行、国会質問原稿の作成、各種挨拶・講演原稿の作成、資料の収集・整理、議員提出法案の作成など、②党務…所属政党の会議・行事への代理出席、他院選挙などでの自党議員の支援など、③庶務…議員の日程管理、来客や電話への応対の他、後援会の世話、政治資金の管理などであり、政策立案から議員の身辺の世話に至るまで広範にわたり、政策担当秘書も政策・立法活動に限らない様々な業務を担当しているのが実情である。
そして、こうした秘書業務の中心は、選挙区や支援団体の世話と政治資金の調達・管理である。

主な参照文献:
「立法学」中島誠 法律文化社







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